新型コロナウイルスが世界に感染を広げる中、欧州で最も流行しているのがイタリアだ。3月15日時点での感染者数は2万人超、死者は1800人超に達しているもよう。彼の国では今、いったい何が起こっているのか。日本とイタリア北部の小都市、モデナを頻繁に行き来している筆者が、リモート取材などを基にリポートする。
3月13日。イタリア北部の小都市、モデナの中心部は閑散としていたようだ。モデナはエミリアロマーニャ州に属し、ボローニャの隣に位置する。この人口約18万のモデナでも、政令に従い薬局と食料品店を除きすべての店舗が全面閉鎖することになり、移動も仕事や健康上、必要な買い物といった必要な理由に制限されることになった。併せてデマやフェイクニュースなども処罰の対象となるという厳しい対応が発表されている。
夕刻の散歩タイムであるにもかかわらず、モデナの中心部ですらまさに聞こえるのは自分が歩く足音の響きだけだったという。
他人の吐いた息を少しでも吸わないように
「私はショックでした。いつもならお互い知己のない者同士でも目が合えばほほえみ合うし、夕べの挨拶を交わし合います。ところが、私とすれ違った人たちは明らかに私を避けるように体の向きを変えたのです。前のほうから自転車で向かってきた人も同じでした。皆が、他人の吐いた息を少しでも吸わないよう緊迫した表情で街を行き来しています。これは私にとって生まれて初めての体験でした」
こう語るのは当地で自動車関連メーカーに勤務するR氏(35歳)。もちろん彼は生粋のイタリア人である。とにかくヨーロッパ人であろうとアジア人であろうと他人は全て接触を断つべき存在であると考えるほどに当地の危機意識は高まっている。
ここモデナ近郊にはフェラーリ、マセラティ、そしてランボルギーニなど世界を代表するハイパフォーマンスカーメーカーが本拠を構えている。それだけではなく、セラミック製品、ニット製品や大規模な牧畜など、多くの産業が栄える豊かな地域だ。今回はそういった主力産業の活動もストップしている。フェラーリ、マセラティ、ランボルギーニは製造ラインを休止し、従業員たちは在宅となる。これら12月決算のメーカーにとっては、出だしからつまずいてしまった訳だ。
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