第1フェイズの2月下旬~3月上旬のキーワードは「一斉休校」だ。外出自粛の要請はまだなく、子どもの食事用としてのカップ麺や袋麺、パスタの買いだめが顕著に、食費を押し上げた。
第2フェイズは小池百合子東京都知事が「ロックダウン(都市封鎖)」を口にした3月下旬。巣ごもり前夜とでもいうべきか。ショックを受けた主婦たちがスーパーに押しかけ、買い物客の長蛇の列が発生し、麺類のみならず、冷凍食品や缶詰、米や納豆まで、食品という食品が買い漁られた。
第3フェイズは7都府県に「緊急事態宣言」が出された4月上旬。ここからは完全巣ごもり期となり、飲食店や商業ビルは休業し、テレワークにより子どもだけでなく大人の在宅率も高まった。スーパーは開店しているとわかり、強烈な買いだめは収まっていく。逆に、大人の昼食用のデリバリーやテイクアウトが増えた。さらに、飲み会は自宅でオンラインに変わった。JCBカード会員データをベースにしたJCB消費NOWによれば、「酒屋」での購入が好調だ。
第4フェイズが「#ステイホーム大型連休」期間。相変わらず日常用の食品の購入は増えているが、それだけでなく巣ごもり生活を楽しもうとワンランク上のテイクアウトを選んだり、自粛で行き場がない食材レスキューのお取り寄せにハマったりと、ややグルメ志向にシフトしてきている。
楽しみは食しかない、ということで、食自体がレジャー化・エンタメ化した。なお、日常食品の品薄感はかなり解消されたが、第3フェイズあたりから続くホットケーキミックスや強力粉の品切れ状態は改善されず、ネットでの高額取引も問題になっている。
このように、食費が増えたと一口に言っても、その内容は変化している。同じ「食費」というどんぶりの中に入れてしまうと実態を見誤り、「食費が増えた、大変だ!」と青くなってしまうのではないか。
「食費」は本当に増えているか、分解してみる
では、現在の「食費」の中身を仕分けしてみよう。「買いだめ・備蓄用」「デリバリー・テイクアウト用」「グルメ取り寄せ用」「酒・つまみ・菓子など嗜好品」そして「いつもの食費」と分類するのはどうだろう。各々いくらそれに使っているかを出すと、より実態を把握しやすくなるのではないか。
先に書いたように、ロックダウンが起き食品が一切買えなくなるかもしれない、と考えた時は多くの人が買いだめに走ったが、今ではその必要はほとんどないだろう。すると、「買いだめ・備蓄用」は今後減っていくだろうし、冷凍してあるストック食材はそろそろ使ってもよさそうだ。
次に「デリバリー・テイクアウト用」。これは「外食費」の代替えと考えてもいい。また、「酒・つまみ・菓子など嗜好品」は、居酒屋などでの飲み代が発生しないので、これまでの「交際費」と「小遣い(の一部)」の金額に収まっていれば、まあ合格ではないだろうか。ビジネスパーソンの小遣いには、ランチ代や飲み代も含まれていたはずで、その理屈で言えばテレワーク時のランチデリバリー代は、本来なら小遣いから出してもいい。
巣ごもり生活で食費が増えてしまった、節約できないと悩む前に、今の食費はコロナ以前の食費とは異なると考え、それまでの「外食費」「交際費」「小遣い」の予算も加えた範囲で収まっているかも計算してみるといい。大きくはみ出してなければ、ひとまず及第点としよう。
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