「JIN-仁」がコロナ禍の日本人にグサリ刺さる訳 タイムリーでスリリング、そして希望を与える
第1期11話分は歴史とどう向き合うか、仁の選択が描かれた。本放送当時、第1期は2009年暮れに終わり、最終回は仁が江戸時代に残ったまま。仁は現代に戻れるのか、恋人・未来とはどうなるのかファンたちは続編を渇望したまま1年4カ月が経過する。ようやく完結編がはじまったのは2011年4月。1カ月前の3月11日に東日本大震災が起こっていた。このときも、生命に関する物語は未曾有の大震災を経験した視聴者たちを励まし、第1期よりも視聴率は上がった。
2020年4月26日(日)から放送されている「JIN-仁- レジェンド」第2期完結編では、仁が江戸に来て2年経過。時代はいよいよ明治維新へ突入していく。仁が江戸に居続けることで、野風と恋人・未来という個人的な問題を超えた、大きな日本の歴史に関わり合っていくことになる。日本の歴史に多大な影響を及ぼした坂本龍馬をはじめ、新選組、西郷隆盛、14代将軍・徳川家茂の正室・皇女和宮、蘭学者・佐久間象山など歴史上の人物たちが続々登場。彼らの顛末を仁は知っている。とりわけ、この2年の間、友情を育んだ龍馬に待ち受ける悲劇は仁を苦しめる。このまま歴史に従っていいものか……。
生と死、その極限状況に置かれたとき、人間はどうするのか。仁はこれまで、ただただ、いま、やれること、その最善を尽くすことを選んできた。
いま、目の前の隣人を救うにはどうしたらいいか。生きているこの国をより良くするにはどうするべきなのか。仁の選択はわれわれに希望をくれる。
「神は超えられる試練しか与えない」に感じる希望
ドラマのなかで繰り返し出てくる「神は超えられる試練しか与えない」という言葉にはなんの根拠もないとはいえ、そう思うことで、いまの苦しみをなんとか耐えられるような気がする。
ドラマでも小説でも、ちょっとした言葉でもなんでもいい。いま、この時期、支えになるものが欲しい。そんなときに再放送された「JIN-仁-」。3.11の試練もなお癒えていないなか、新たな未曾有の試練が日本を襲っているいま「JIN」が本放送から10年近い時を超えて再び、日本人の心に希望の光を照らすことが、時を超える主人公・仁の物語と重なって、いっそう胸を打つのである。
村上もとかの原作漫画の完成度が高いことと、朝ドラ「ごちそうさん」や大河ドラマ「おんな城主直虎」や「義母と娘のブルース」などを手掛けた森下佳子の理路整然とした構成によって現代と過去の行き来もわかりやすいうえ、エモーショナルなところは徹底してエモーショナルな脚本、いまでも日曜劇場ではよく行われている感情を揺さぶる音楽をかける演出、大沢たかお、内野聖陽、綾瀬はるか、中谷美紀などが説得力のある演技をしていて見応え十分。「JIN-仁-」何度も視聴するに耐えうる普遍性のあるドラマである。
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