「JIN-仁」がコロナ禍の日本人にグサリ刺さる訳 タイムリーでスリリング、そして希望を与える

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江戸の人々の病に立ち向かう仁ではあるが、それによって無敵のスーパーヒーローにはならない。彼の心は常に揺れている。現代とはまったく状況の違う江戸時代にやって来たことで、長い歴史のなかで医療技術が進歩したことを改めて実感し、己がいかにちっぽけかに気づく。さらに、本来なら亡くなるはずの人を治してしまったことで未来を変えてしまうのではないかという疑問を感じ、江戸時代の人間たちと関わることを躊躇しはじめる。だが、治療の手助けをしてくれている橘咲(綾瀬はるか)をはじめとして、この時代で懸命に生きている人々のことを見捨てることができない。

仁が出会った花魁の野風(中谷美紀)は、現代に残してきている仁の恋人・未来(中谷美紀二役)にそっくり。未来の先祖らしき人物ではないかと思われる野風と仁が触れ合うたびに、未来の存在に変化が起こる(現代からもってきた未来と仁の2ショット写真に変化が起こる)。

2020年1〜3月まで放送され高視聴率を獲得した「テセウスの船」は父親(鈴木亮平)の冤罪を晴らすため、主人公(竹内涼真)が過去を変えようとする物語だった。間違いを正すという大義名分と、いまの世の中がちっとも良くないのは過去が間違っていたからで、修正すれば世界は変わるという希望は、2020年の気分にピッタリだった。

過去を変えてはいけないと悩む主人公の葛藤

一方、「JIN」では過去を変えてはいけないと主人公は悩む。これは単に歴史を変えてはいけないということではなく、「生命」に関する問いになっている。過去、死ぬはずだった人物を仁が生かすことで、後に生まれるべき人が生まれてこない可能性がある。ひとりの人間(仁)が見知らぬ誰かの人生を変えていいものであろうか。

「バタフライエフェクト」という、一匹の蝶の羽ばたきが竜巻を呼ぶというような、至極ささやかなことが回り回って大きなことに波及する現象になぞらえた、主人公の迷いも、いま、われわれはちょうど味わっているところである。外出自粛、営業自粛のいま、自分だけなら……と思って外出することが誰かの感染につながるかもしれない。他者に影響を与えないように、誰とも触れ合わず、家にこもること。1人ひとりの自覚がいま、問われている。例えば、震災のときは、人に会いに行くこと、手を差し伸べることが大事だったが、いまは会いに行くことも手を触れることもできない。

仁は、乳がん(乳の岩と江戸では言われている)を患った野風を助けるべきか、助けないほうがいいのか迷い、どちらが、のちの恋人にとって良いのか迷った末、ある決断をする……。

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