仮に、勉強が嫌いな子どもが、それでも「給食が楽しみだから、学校に行く」という気持ちになっても、それも“あり”かな、と思うのです。子どもたちが大人になって、小・中学校時代を振り返ったときに、舌やお腹の感覚で「給食がおいしかったな」と思い出すような、そんな学校があってもいい、と考えたのです。
また、手作りの食事を1日3食出しているご家庭だったら問題ないのですが、「中食」や「外食」などが多いご家庭だと、子どもにとって3食のうちの1食、つまり給食が占める割合が非常に重要になってきます。給食以外には野菜をとらないケースや、朝ごはんを抜いて昼まで何も食べないケースがあるからです。
しかも、コンビニやファミレスの食事は味が濃いですから。素材のうまみを生かした本当の味を「まずい」、と言ってしまう子どももいます。子どもの頃からいい素材を、そしてこれこそ本物の味だよ、ということを教えていく必要があります。そういったことが、給食革命に取り組むきっかけになりました。
――メニューや味付けには、どのような工夫をされていますか?
足立区の作っている給食は、天然のだしを使っています。塩分を控えた中でも和食本来の鰹節、鶏がらなどの天然だしにこだわっています。冷凍物も使っていません。野菜は農場の協力もあり、地場のものが多いです。
豊かで健全な味覚は子どもの頃から形成される、と言われています。学校給食を通じて、うまみがおいしいと感じられる子どもの感性を育てるとともに、保護者への啓発も図っています。
だからといって、給食にたくさんコストをかけてぜいたくをさせている、ということもまったくありません。決められた予算の中で、どのようなメニューを通じて子どもたちにおいしく食べさせるかについて、区の栄養士の方は真剣に取り組んでくれています。
味はもちろんおいしいに越したことはないですし、メニューもバラエティに富んだものを提供するのは大切ですが、子どもたちをじっくり観察していると、「食べさせようとする雰囲気づくり」も非常に重要なことがわかりました。
そこで、各学校ではいろんな工夫をしています。バイキング形式で実施したり、クイズで食の話題を提供したり、シチューやカレーの中にハートマークのニンジンをほんの少しだけ入れるなど、楽しく食べられる工夫をしています。
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