足立区を根こそぎ変える「給食革命」 “犯罪の多い街"が持つ、負のスパイラルを変える

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担任の先生が教室で食べずに、別の場所で食べるなんて、もう論外です。一緒に食べながら、毎日生徒の様子をみて、「○○くん、嫌いなものが食べられたかな」とか、「頑張ってるね」とか声をかけることが大切です。

栄養士さんがそれぞれの教室を回ってメニューや食材について説明したり、食べ残しの少なかった教室を表彰したり、そういったいろいろな取り組みをしている学校が、やはり給食の残菜も減っているのです。

そのためには、校長先生がリーダーシップをとって、担任の先生や教職員を説得して動かしていく必要があります。これは学校経営と同じこと。実際に、給食の残菜が減っている学校は、子どもの学力も同じように伸びている、と聞いています。

そういった意味で、この事業は単に、給食の味付けをよくするとか、残菜を減らすとか、そのような表面的なことではなく、その裏にある「教育」や「健康」に関することのほうが重要なテーマだと言えます。

目に見えて肥満率が減少

――学校単位だけでなく、区全体で「給食革命の成果が数字になって表れている」と聞きました。

足立区の近藤やよい区長(撮影:尾形文繁)

まず、肥満傾向が落ちています。中学1年生の男子生徒は肥満率が2007年の4.56%から12年には2.71%に、女子生徒は同3.02%から1.30%に大きく下がりました。

子どもの体力も上昇傾向にあります。2013年の小学校の体力・運動能力については過去3年間と比較して、「上体起こし」や「反復横跳び」などほとんどの項目で過去最高値を記録しました。中学校でも同様に、上昇傾向にあることがわかりました。

体力の低下や肥満傾向などは、ひいては成人病や生活習慣病につながっていくものです。これらの数値が一定程度下がっているのは、給食革命の効果なのかもしれません。

残菜も減りましたね。事業を始めた当初は小学校で7.5%、中学校で13.1%、これはトン数で言うと341トンにもなります。これがすべてゴミでしたから。それが今では(2012年度末時点)、小学校で3.7%、中学校で7.8%、トン数で言うと197トンまで急減しました。

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