お年寄りの「引きこもり」が社会問題化する中、埼玉県和光市の“高齢者を街に連れ出す”取り組みが注目を集めている。
和光は10年以上も前から高齢者対策に乗り出し、「和光モデル」と呼ばれる独自のノウハウを確立。その仕組みを学ぼうと、霞が関の官僚や自治体などの視察団が、次々と押し寄せている。その数は年間300団体を優に超えるという。
「現場のノウハウを国政に生かしてほしい」との要望で、市の職員が国に2年半出向。介護保険制度の構築にも全面的に参画したほどだ。
和光の高齢者対策は何が優れているのか。そもそも本当に、抜本的な高齢者対策になるのか。松本武洋市長に聞いた。
カジノも登場! お年寄りが外に出る工夫
――「和光の高齢者対策は画期的」と、介護関係者の間で話題です。介護を必要とする状態の人がどれぐらいいるかを示す「要介護」認定率は、和光の場合は10.2%と、全国平均の17.4%を大きく下回っています。いったい、どのような特徴があるのでしょうか。
和光の取り組みの特徴は、介護の「予防」に力を入れていることです。
「要介護」「要支援」状態になると、お年寄りは介護保険の対象になり、そういった方にいかに手厚いサービスを提供するかが、従来の介護のメインテーマでした。ただ、和光は2003年ごろから、「要介護」になるより「前」のケアを重視しています。
当時はちょうど、全国的に65歳以上の高齢者人口が格段に増えていく、という推計が注目され始めた頃です。その少し前から予防医学を提唱していた当時の市長が、「予防型の仕組みを確立する」との先進的な方向性を示したのです。
方向性を示した市長は、就任前はお医者さんだったので、専門的な見地から将来のあり方を見据えていたのでしょう。
トピックボードAD
有料会員限定記事
ライフの人気記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら