「アミューズメント・カジノ」や「喫茶サロン」は交流の場としてだけではなく、看護師や管理栄養士も待機していますので、健康や栄養バランスのチェックの場としても機能しています。運動と栄養管理、そして口腔機能向上などのサービスを複合的に展開している、というわけです。
小規模な施設を網の目のように張り巡らす
――施設をたくさんつくっているとのことですが、具体的にはどのような施設なのでしょうか。特別養護施設のようなものですか?
特別養護施設をつくることは住民ウケがよいので、実は自治体のトップには政治的メリットがあります。ですから、特別養護施設をいっぱいつくる地域も少なくありません。
ところが、それをすると費用負担が大きいので、てきめんに介護保険の医療費に跳ね返ってきます。また、特別養護施設に入ることが、はたして幸せなのだろうか、という思いもあります。自宅から施設に通いながら、あるいは自宅に近い施設で、今までの生活圏の中で過ごされるほうが幸せではないか、と和光は考えるのです。
和光には特別養護施設が1軒しかありません。8万人という住民がいる中で、特別養護施設が1軒しかないのは異例のこと。それに対する批判は、いまだに根強いことも確かです。
一方で、特別養護施設よりも小規模なサービスつき高齢者向け住宅(サ高住)を和光はいち早く積極的に整備してきました。 サ高住は住居ですから、お年寄りはそこで、自宅にいるような感覚で住むことができる。特別養護施設と同じようなサービスを受けられます。運動などトレーニングができるのはもちろん、食事のサービスもあり、クリニックを併設しているところもあります。
また、先ほど話題に出た「喫茶サロン」を備えた「ふれあいプラザ」など、小規模ながらも多く機能を持つ施設を張り巡らせ、加えて24時間随時対応、定期巡回のサービスを全地域で提供しています。
小規模多機能施設は市にとって、資金負担が少ないのですが、実際の運用面では負担が大きい。料理屋さんでもそうでしょうが、小さなお店でたくさんの種類の料理を出すのは、どうしても手間がかかる。ただ、和光は「日常生活圏」との考えを重視しているので、小規模施設をきめ細かく配置しています。
――確かに小規模とはいえ、たくさんの施設をつくるとなると、運用や全体の管理が難しそうです。すべて行政が担っているのですか?
市は事務局としての役割を担いつつ、全体的な運営を主導しています。
ただ、実際のサービスの提供は、民間に委託しています。居宅支援や訪問介護の事業者、グループホームの運営者などです。
民間委託した際に、どうしてもありがちなのが、“サボタージュ”のような状況。お年寄りが次々に元気になってしまうと、企業にとっては「収入源が減る」という側面があるためです。お年寄りの健康と事業者の利益は、ややもすると「相反関係にある」と言えるかもしれません。
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