そこで、契約した事業者には、介護の心配がなくなったお年寄りに対しても、継続的にサークル活動とかトレーニングといったサービスの提供をお願いしています。つまり、事業者側のメリットを考慮し、予防対策のサービスだけでなく、その後のケアも事業者に委託する包括的な契約を結んでいるのです。
先ほどお話した「喫茶サロン」も事業者に委託していますが、栄養指導や健康チェックなども一緒にお願いしています。
市側では、保健福祉部の「長寿あんしん課」が中心となって運営しています。たとえば、お年寄りの個別の課題や地域の課題を把握するために、アンケート形式(「健康に関する基本チェックリスト」など)で調査を実施します。
もちろん、返信されないケースもあるのですが、そのお宅を職員が1戸1戸訪問し、どのような課題を抱えておられるのかを調べて把握しています。
行政と民間との連携も重要です。お年寄りのケアプランの質の向上や、職員のレベル向上を目的に、「コミュニティケア会議」を毎週開催しています。そこには、市の職員だけでなく、管理栄養士や理学療法士といった外部助言者、そして時には居宅支援や訪問介護の事業者など民間の代表者が参加し、一人ひとりのケアプランを把握しています。適切なサービスの提供を専門的な見地からチェックしているのです。
この行政と民間、そして専門家による3者連携も、「先進的な部分」と評価していただいています。
当初は市民から苦情もあった
――先ほど、「2003年ごろから積極的に展開した」と話されましたが、住民の間にはこのような介護対策がすぐに根付いたのですか?
実は、当時はこちらの意図がなかなか伝わりませんでした。
「トレーニングを強制させられている」「(本格的な)介護サービスを受けさせたくないだけなのでは」など、数々の批判がありましたね。議会にも市民からの苦情が相次ぎ、かなりの議論になりました。
ところが、2年ぐらい経過すると、「要介護」認定率が明らかに下がってきたのですね。そして周囲にも、元気になるお年寄りが増えてきたのです。
数字で表れ、実例がたくさん出てくると、マスコミにも取り上げられるようになりました。こうなってくると、だんだんと市民の認識も変わってきて、最初の苦情めいたものが劇的に減ってきました。今では、予防的な活動は和光では「当たり前」となっています。
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