コロナ対応に映る「日本と中東」文化の大きな差 デマ医療出回る一方、回復者祝福される国も

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あいさつの際の握手やハグといった現地の習慣が今も多くの人によって続けられている。だが、当局が発表する感染者数よりも実態は深刻なのではないかと考える人も多く、消毒用のアルコールなどは売り切れ状態という。

政府の担当閣僚の能力や発言も疑問視されている。エジプトのザイエド保健・人口相は、「ウイルスはエジプトではなく中国に生息するものだ」としてエジプトに広がる恐れはないと発言。ウイルスは感染性もないと語ったほか、視察の際に鼻を覆わずに不適切にマスクを着用している写真がSNS上に拡散されて、笑いのネタになった。独裁的な体制や貧困という境遇をヌクタ(笑い話)で楽しく過ごす術を心得たエジプト人らしい。

新型コロナが政争の具になっている

衛生観念も問題だ。中東ではもともと衛生意識が日本より低い国が多い。ナイルクルーズ船でも感染が拡大したエジプトに住む現地人女性は、「新型コロナウイルス以前の問題として、公衆トイレやストリートフード(屋台)の衛生意識の低さがある。街頭でも、職場である大学でもマスクをしている人はほとんど見かけない」と訴える。

医療インフラの脆弱性や、国民の健康を守ろうという政府当局の意識の低さも問題視されている。感染が広がったイランでは、国会選挙の投票率アップが優先されて国民への感染実態の公表が遅れたと指摘されている。アメリカの経済制裁によって医薬品が不足したことも加わり、対応の遅れから感染が拡大しただけでなく致死率も高い。

エジプトで新型コロナウイルスは、国軍出身のシシ大統領と対立するイスラム組織ムスリム同胞団の間で政争の具にされている。同胞団のメンバー、バガット・アリ氏はツイッターに投稿した動画で、症状が見られる人は、治安や司法、メディアの関係者と握手し、エジプトが置かれている実態を認識させるべきだと訴えた。

これに対し、ジュマ宗教問題担当相は「新型コロナウイルスに感染しているムスリム同胞団のメンバーが、軍や警察、司法、メディア、無辜の政府関係者にウイルスを拡散するよう指示を受けている」と省の公式サイトに声明を出した。

イスラム宗教界からは、珍説や風変わりな治療法が提唱され、ネット上で冷笑を誘っている。フランスに住む北アフリカ・チュニジア出身のイスラム聖職者は、「このウイルスはアッラーの兵士だ。中国当局は100万人のウイグル人を孤立状態に置いているが、今は5000万人の中国人がウイルスによって隔離状態に置かれている。アッラーの意思によって彼ら(中国人)は治療法を見出せていない」と主張した。当初は中国で広がったが、欧州や中東に拡散した今、この荒唐無稽な主張も批判の的となっている。

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