コロナ対応に映る「日本と中東」文化の大きな差 デマ医療出回る一方、回復者祝福される国も

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一方、イギリスに拠点を置くイスラム宗教指導者は、シーア派(イランの国教)はアイーシャ(預言者ムハンマドの妻の1人)がネズミを食べることができるとの見解を示していたと主張しており、アイーシャを冒涜したためにイランは新型コロナウイルスによる罰を受けていると述べた。

イランの聖職者も風変わりな新型コロナウイルスの治療法を発見したと珍説を開陳。SNSアプリ「テレグラム」の自身のチャンネルを通じ、「寝る前にスミレオイルを染み込ませた綿を肛門に当てておく」と解説した。イランでは、この聖職者は支持者からイスラム医学の父として知られているというが、ネット上で笑いの対象になっている。

感染者が少ない国の悲しい事情

戦火が広がる中東ならではの話もある。新型コロナウイルスが100カ国以上の国に広がる中、リビアではこれまでのところ感染者が確認されていない。感染が拡大するイタリアと地中海を挟んで向かい合うが、首都トリポリで唯一機能している空港が閉鎖され、外部世界との往来が極端に少ない。内戦が続くシリアの北西部イドリブ県も、難民としてトルコに人々が流出するものの、外からわざわざ入ってくる人はほとんどいない。

イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区のガザ地区では、イスラエルによる「封鎖」が続けられている。SNS上には「イスラエルのガザ包囲のおかげで世界でも最も安全な地域の1つだ」と、イスラエルのパレスチナ政策を皮肉る声も。

だが、こうした地域で感染が広がった場合、医療体制や情報の伝達などすべての面で劣っており、悲惨な状況になりかねない。日本などでは、新型コロナウイルスをめぐる過剰なほどの報道や情報の拡散で、過剰な不安感に苦しむ「コロナ疲れ」の現象も見られるが、こうした地域では逆に情報不足に市民は不安を募らせている。

一方、バーレーンでは、新型コロナウイルスから回復して退院した男性がテレビのインタビューに応じ、SNSには祝福が殺到した。病院などの隔離施設で働く人々が「バーレーン・ヒーローズ」と呼ばれており、日本のようにぎすぎすした感じは少ない。

イスラム的な価値感により、人生のすべての部分が自らの裁量下にはないと判断する人も多い。コロナ疲れも指摘される日本人にとっては、学べる点ではないだろうか。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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