「求人倍率100倍」の運送会社が忘れない"痛み" 悲しい事故をきっかけに社長が変えたこと
たった今、自分の息子は命を落とした
その日のことは忘れもしません。
2013年8月30日。宮田運輸専務の福田真から、私の携帯電話に緊急の連絡が入りました。
当社の社員が運転するトラックがスクーターと接触。スクーターに乗っていた男性が緊急搬送されたというのです。
着信があったのは、残暑厳しい午後3時頃でした。外出中の私は、スクーターでの転倒ならば怪我では済まず、命に関わるかもしれないと心配しながら救急病院へ直行しました。
病院に駆けつけると、案内されたのは病室ではなく、霊安室でした。
男性の遺族の方々が5、6人集まっていました。私はとっさに前に進み出て、近くにいた男性に恐る恐る声をかけ、名刺を差し出しました。
「事故を起こした者の会社の社長です。本当に申し訳ございませんでした」
そのとき名刺を受け取ってくださった方が、亡くなった男性のお父様でした。
怒鳴りつけられてもおかしくない状況です。しかし、お父様はやさしい口調でこうおっしゃいました。
「どっちがいいとか悪いとかはわからないけれども、たった今、自分の息子は命を落とした。この息子には小学校4年生の女の子がいる。そのことだけはわかっておいてくれよな」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら