「求人倍率100倍」の運送会社が忘れない"痛み" 悲しい事故をきっかけに社長が変えたこと

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かつては社員を数字と目標で縛りに縛った、宮田運輸4代目社長の宮田博文さんが行った改革とは?(写真:8x10/PIXTA)
「厳しい」「ブラック」といったイメージがあり、人手不足も当たり前の運送業界。ところが、社員募集の求人を出すと100倍近い応募がある企業がある。関西を中心に事業を手がける中堅物流会社、宮田運輸だ。
オープンな社風などで話題の同社は、4代目社長の宮田博文氏の就任後、わずか5年で利益を15倍にも拡大したことでも知られる。しかし、かつては社員にプレッシャーをかけ、目標で縛る経営を行っていた時代もあったという。
転機となったのは、悲しい事故。そこから宮田運輸が行った改革とは? 宮田氏の近著『社長の仕事は社員を信じ切ること。それだけ。』にもまとめられた宮田運輸独自の取り組みを聞いた。

たった今、自分の息子は命を落とした

その日のことは忘れもしません。

2013年8月30日。宮田運輸専務の福田真から、私の携帯電話に緊急の連絡が入りました。

当社の社員が運転するトラックがスクーターと接触。スクーターに乗っていた男性が緊急搬送されたというのです。

着信があったのは、残暑厳しい午後3時頃でした。外出中の私は、スクーターでの転倒ならば怪我では済まず、命に関わるかもしれないと心配しながら救急病院へ直行しました。

病院に駆けつけると、案内されたのは病室ではなく、霊安室でした。

男性の遺族の方々が5、6人集まっていました。私はとっさに前に進み出て、近くにいた男性に恐る恐る声をかけ、名刺を差し出しました。

「事故を起こした者の会社の社長です。本当に申し訳ございませんでした」

そのとき名刺を受け取ってくださった方が、亡くなった男性のお父様でした。

怒鳴りつけられてもおかしくない状況です。しかし、お父様はやさしい口調でこうおっしゃいました。

「どっちがいいとか悪いとかはわからないけれども、たった今、自分の息子は命を落とした。この息子には小学校4年生の女の子がいる。そのことだけはわかっておいてくれよな」

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