「求人倍率100倍」の運送会社が忘れない"痛み" 悲しい事故をきっかけに社長が変えたこと

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それは、「困ったときは大騒ぎ」という合言葉です。

たとえば、宮田運輸には「宮田の仲間」というLINEグループがあります。管理職クラスが参加していて、日常のあらゆる出来事が共有されています。

そして、何か困ったことが起きたら、「困っている!」と大騒ぎするのです。すると、私も含めた全員が打開策を考え、人手が必要ならば空いている仲間がいち早く現場に駆けつけます。

時には、大阪の枚方のヘルプに対し、岡山県の岡山事業所、愛知県の半田事業所、さらには埼玉県の埼玉深谷事業所からと、続々と助っ人が集まることもあります。

事故率4割減「こどもミュージアムプロジェクト」

2014年からは、「こどもミュージアムプロジェクト」という取り組みも始めました。例えば、トラックの後ろにドライバーの子どもが「お父さん頑張って」といった応援メッセージを添えて描いた絵をラッピングするのです。

自分の子どもの絵とメッセージを背負って走れば、うれしいですし、何よりドライバーはそのトラックを大切にし、「恥ずかしくない運転をしよう」という気持ちになります。また、ラッピングされたトラックの後ろを走るクルマも、絵が目に入るだけでやさしい気持ちになるはずです。

事実、効果はてきめんで事故率は4割減。ドライバーが急発進、急停車することも減り、丁寧な運転になったことで燃費も向上しました。

『社長の仕事は社員を信じ切ること。それだけ。』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

最近、いわゆる「あおり運転」が問題になっていますが、この取り組みが広がれば、きっとそういったトラブルもなくすことができると信じています。

現在、この「こどもミュージアムプロジェクト」は宮田運輸だけのものではなく、150を超える事業者に広がり、海を渡った中国にも活動の輪が広がっています。

今、私が会社経営について思うことは1つ。それは、「愛でいけるやん」ということ。実際、人を信じる経営を始め、さまざまなアイデアを試すうち、数値目標を掲げて社員を追い込んでいた頃よりも、業績は伸び、好調に推移しています。

2012年には25億円だった売り上げが40億円になり、経常利益も1000万円弱から1億5300万円になりました。

また、「厳しい」「ブラック」と揶揄され、人材不足が当たり前となっている運送業界において、当社では社員募集に対し100倍以上の応募が集まることもあります。こうした変化が起きたのはきっと、自分の良心に従って仕事をするようになったからです。

従業員を疑うことなく信じ切り、主体性が開花するのをひたすら待つ。これを続けることで、従業員一人ひとりが輝き、それが、よりよい社会を実現することにつながると私は考えています。

宮田 博文 宮田運輸代表取締役社長

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みやた ひろふみ / Hirofumi Miyata

高校卒業後、祖父が創業した宮田運輸に入社。ドライバーからスタートし、専務などを経て2012年、創業45周年を機に父の後を継いで社長に就任。当時の売上高は25億円。経常利益1000万円弱だったが、2017年3月期は売上高35億円。経常利益1億5300万円に拡大。

同社のトラックが起こした死亡事故をきっかけに始めた、トラックに子どもの絵をラッピングして、事故抑止につなげる仕組み「こどもミュージアムプロジェクト」は国内だけでなく、中国、韓国など海外の公官庁、企業からも大きな注目を集めている。著書に『社長の仕事は社員を信じ切ること。それだけ。』(かんき出版)がある。

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