筋肉体操の谷本先生が教える良い脂肪の取り方 脂肪の使い分けができるかで健康に差が出る

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肉の脂身は「悪い脂肪」、植物油や魚の脂身は「良い脂肪」などといわれる主な理由は、このような動脈硬化に与える影響の違いにあるでしょう。

 なお、魚の多価不飽和脂肪酸等による脳血管の状態改善は、脳血管性認知症の予防にもつながります。脳血管性認知症は全体の15%ほどですが、70%程度を占めるアルツハイマー型認知症にも実は有効です。

 アルツハイマー型認知症は、脳内に老人斑(アミロイドというタンパク質)が蓄積するために起こるとされますが、この老人斑形成予防にも魚に含まれる脂肪酸が効果的だということがわかっています。脳神経の炎症を抑える作用や、脳神経の材料となることなどがその理由とされています。

 魚を週3回以上食べる習慣がある人は認知症のリスクが半分になるという研究もあります。魚の脂肪酸は「頭」によいのです。

各食品の脂肪酸をグラフで比較してみた

 さて、肉類には飽和脂肪酸、植物油や魚には不飽和脂肪酸という流れで話を進めてきましたが、正しくは、ほかの食品と比べて「飽和脂肪酸の割合が多い」「不飽和脂肪酸の割合が多い」となります。

各食品の脂肪酸組成(本文より引用)

 各食品の脂肪酸組成を図示します(図)。飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸であるn-6系とn-3系の4つに分けてグラフ化しています。

 多価不飽和脂肪酸を2つに分けたのは、n-6系とn-3系で、体に与える生理作用に大きな違いがあるからです。

 魚油に豊富なn-3系は前述のとおり血管、脳機能などへ望ましい影響を与えます。揚げ物など調理によく使われる植物油に豊富なn-6系も大切な脂肪酸なのですが、摂りすぎると悪玉のLDLを増やしたり、炎症を誘発したりすることが知られています。

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 肉類では、牛肉、豚肉の場合は飽和脂肪酸の割合が40~50%程度(残りの50~60%が不飽和脂肪酸)と多めです。鶏肉なら飽和脂肪酸の割合が30%程度と牛、豚よりやや少なめになります。ですので血管系の状態改善を考えた場合、同じ肉を摂るなら「脂肪酸組成的には牛や豚より鶏がよい」ということになります。

そして揚げ物などによく使われる植物油の組成を見ると、飽和脂肪酸の割合は5~15%程度とかなり低くなります(例外:ヤシ油は90%程度と高い)。

飽和脂肪酸が少ないという点ではよいのですが、摂りすぎを控えるべきn-6系の多価不飽和脂肪酸がやや多いという特徴があります。

飽和脂肪酸(主に肉)、n-6系不飽和脂肪酸(主に調理油)は摂りすぎないよう、n-3系不飽和脂肪酸(主に魚)はある程度しっかり摂る、と覚えておきましょう。

谷本 道哉 近畿大学准教授

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たにもと みちや / Michiya Tanimoto

近畿大学生物理工学部人間環境デザイン工学科准教授。1972年静岡県生まれ。大阪大学工学部卒。パシフィックコンサルタンツ㈱にて道路トンネル設備設計業務に従事後、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。国立健康・栄養研究所特別研究員、順天堂大学博士研究員などを経て現職。専門は筋生理学、身体運動科学。「みんなで筋肉体操」の番組中では「筋肉指導」として、筋トレメニューの作成と指導を担当。

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