「複利を10歳で学ぶ米国」と周回遅れの日本の差 日本人の「マネーリテラシー向上」は急務だ

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アメリカの民間団体「JumpStart」は、幼児期から高校卒業までに身につけるべきお金の知識を『教育基準(ナショナルスタンダード)』としてまとめており、アメリカでは多くの学校がこれを採用しています。少し内容を見てみましょう。

『ナショナルスタンダード』(2017年、第4版)によると、マネーリテラシーは「支出と貯蓄」「クレジットと負債」「勤労と所得」「投資」「リスクと保険」「金融上の意思決定」の6つの領域に分けられます。

「投資」の領域では、高校卒業までに「富を築き、ファイナンシャルゴールを達成するにはどうすればよいか説明できる」ことを1つのゴールとしています。

驚くべきことに、そのプロセスとして、10歳相当で「投資をする理由を説明しよう」「単利で得られる利益を計算しよう」「複利で得られる利益を計算しよう」「単利よりも複利のほうがリターンが多く、有利である理由を説明しよう」といった内容を学ぶとされています。日本の小学4年生の子どもが、複利計算を理解しているでしょうか?

さらには、18歳相当で学ぶ項目に「投資を遅らせたときの退職後の結果と、早くから投資したときの利得を比較しよう」とあります。確定拠出年金を多くの企業が導入している現実からすれば、日本の高校生も考えておくべきテーマかもしれません。

北欧の「生きる力」としてのマネー教育

北欧についても紹介しましょう。北欧諸国の教育は、自立して生きる力を育むことに主眼が置かれています。そのため、幼児期にはものづくりやお金の扱い方を、小学校ではアントレプレナーシップ(起業家精神)を教えます。手作りの作品(商品)をつくり、お店を開いてそれを販売する方法を学ぶといったことです。

これはマネー教育であり、キャリア教育でもあります。学校を出た後、自ら生活の基盤をつくって生きていけるようにするための教育です。

消費者教育にも力を入れています。デンマークやエストニアを含めた北欧近隣諸国では、1990年代から消費者教育のガイドライン(「消費者コンピテンスの指導」)を閣僚レベルで作成し、推進してきました。市民が消費者として、市場で主体的に選択できることを目指すものです。

2016年、私はスウェーデンのある町の消費者相談室を訪問しました。日本で「消費者相談」といえば、商品やサービスを購入したときのトラブルについて相談するところというイメージがあります。

しかし、その消費者相談室では相談の過半数は家計に関する相談、とくに債務相談だという実情を伺いました。一般的な家計相談に乗るのは、消費者相談室の正規の業務だそうです。本気で市民の家計管理能力を向上させようとしているのでしょう。

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