第2回:20年間「デパス」を飲み続ける彼女の切実な事情(2019年12月3日配信)
第3回:薬剤師が見たデパス「気軽な処方」が招いた実態(2019年12月6日配信)
第4回:「デパス」に患者も医者も頼りまくる皮肉な実態(2019年12月10日配信)
第5回:田辺三菱製薬「デパス」製造者の知られざる歩み(2019年12月27日配信)
第6回:デパスの取り締まりが「遅すぎた」と言われる訳(2019年12月31日配信)
※本来複数の製薬企業から同一成分の薬が発売されている際の表記では、成分名のエチゾラムを使うのが一般的である。しかし、服用患者も含め世間一般では簡単に覚えやすい「デパス」でその名が広く知られていることが多い。このため以後はエチゾラムではなく「デパス(エチゾラム)」と表記することをあらかじめお断りしておく。
「一度、デパス(エチゾラム)依存になってしまうと離脱はかなり困難になる」
精神科医の多くが口をそろえて言う言葉だ。もっとも、デパス(エチゾラム)を含むベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性については、以前と比べ医療従事者への注意喚起も盛んに行われていることもあり、最近では精神科医以外でも新規処方は避けたがる傾向が強いと関係者は口にする。
また、高齢者では数多くの薬を服用する多剤併用により副作用のリスクが高まるという研究報告も多くなり、ベンゾジアゼピン受容体作動薬も含め、漫然と投与が続いている薬は減薬・中止のターゲットになりやすい。ただ、デパス(エチゾラム)の場合、それが一筋縄ではいかないことが多いという。ある若手医師は次のように語る。
医師や薬剤師も苦労するデパス(エチゾラム)の減薬
「多剤併用問題がメディアで報じられることが増えたせいか、高齢の患者さんに減薬を提案すると、多くの場合、基本的には同意してくれます。ところが減薬に同意したはずの患者さんでも、デパス(エチゾラム)を服用している場合にその減薬を提案すると、一気に険しい表情になって『いや、先生、この薬だけは……』となることが多いのが現実です。それまでの和やかな雰囲気が一変して緊迫することすらあります。ああ、これが常用量依存なのだ、と実感する瞬間です。このためデパス(エチゾラム)の減薬・中止は、日常診療で十分な関係が構築されてからでないと提案すらできません」
また、高齢者が入所する介護施設に医師と同行して服薬指導に従事する薬剤師からもデパス(エチゾラム)の減薬・中止には苦労するという声を耳にする。
「デパス(エチゾラム)の減薬・中止を提案すると、ご家族の方から『この薬だけは続けさせてください』と哀願されることもあります。よくよくお話を聞くと、そのご家族がデパス(エチゾラム)を長年服用している半ば常用量依存だったということもあります」(都内の薬局勤務の薬剤師)