グーグルが「スマートホーム」に本気を出す理由 アメリカ本社責任者「日本で新製品続々投入」

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声は、老若男女がコミュニケーションするうえでの主要な手段だ。とくにデバイスを使ってタイプするよりも声のほうが自然だ。高齢者や障害者など、タッチパネルが使いづらいことによってテクノロジーから離れていた人たちを再び引きつける大きなポテンシャルがあると思う。

とはいえ、声でのコミュニケーションは、ユーザーから声を発し、対話を始めないといけない。つまり事前に言うことを考えなければならない。ただ本来はテクノロジーのほうが、ユーザーに対して何かをしてくれるはず。プロアクティブな(先回りする)テクノロジーだ。

リシ・チャンドラ(Rishi Chandra)/ベイン・アンド・カンパニーを経て、2006年グーグル入社。クロームキャストやグーグルホームなどのプロダクト責任者を経て、2018年8月からグーグル・ネストのジェネラルマネージャー兼バイスプレジデント。カリフォルニア大学バークレー校でコンピューターサイエンスを学び、スタンフォード大学MBAも修了(撮影:今井康一)

――「プロアクティブ」とはどんなテクノロジーなのでしょう。

Nest Hub Maxでは顔認識によって、前に立っている人に向けて最適な情報を表示する。荷物が届いていると通知したり、もう出かける時間なので天気予報を教えたり、といったものだ。「グーグルアシスタント」はますます先回りして情報を届けてくれるようになる。

今まで音楽を聴きたいときには、再生してほしいアーティストの名前をはっきりと言わなければならなかったが、システムが徐々に好みを学習すれば、いちいちアーティスト名を言わなくても、思いどおりの音楽を流してくれるようになる。

ネストの機能の中には、住人が出かけたことを検知すると、冷暖房を自動的に消してくれるものがある。テレビやライトをつなげれば、これらも自動的に消してくれるようになる。こうした機能はもっと必要になるし、AIの次の方向性だと思う。

キットの仕様が各社で異なる実態

――一方でスマートホームのデバイスを設定したり、ほかのデバイスとつなぎ合わせたりするには、それなりの知識が必要です。こうした設定の簡略化のために必要なことは。

将来的には新しいスマートライトやスマートテレビ、スマート炊飯器といったものを家に導入した際に、ネットワークが自動的にデバイスを検知して、すぐにつながるといったことが可能になるだろう。

デバイスメーカーも製品をネットにつなげたり、アプリケーションを入れたりすることに長けているわけではなく、グーグルのような会社が連携し、簡単にスマート化できるソフトウェア開発キットを提供している。ただグーグルのキットではアップルやアマゾンのデバイスにはつながらないかもしれない。キットの仕様が各社で異なるからだ。

これは業界全体として取り組んでいかなければならない課題であり、あらゆるデバイスがすべてのエコシステムの中で動作しなければビジネス全体が成長しない。

わかりやすい例でいえば、初期のウェブブラウザーを思い出してほしい。当時は「インターネットエクスプローラー」や「ファイアフォックス」「オペラ」といったブラウザごとにウェブサイトを作らなければならなかったが、その後統一基準が作られている。

(編集部注:インタビュー後の12月中旬に、グーグルはアマゾン、アップルとともに、スマートホーム製品に関する業界共通の通信規格を整備するための作業部会を設けると発表した。)

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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