東証の「市場区分変更」、見えぬ議論の終着点 1部上場企業の「降格案」はなぜ消えたのか
問題は、市場区分と分けて考えるべきと整理されたインデックスである。金融庁の論点ペーパーは、機関投資家にとって使い勝手のいい、新たなTOPIXの創設を前提にした書きぶりだ。
論点ペーパーは、インデックスの選定対象はプライム市場だけでなくスタンダード市場からも選定できるようにしてはどうかと提言している。金融審の議論では、グロース市場からの選定を求める発言が出ている。
現在のTOPIXは東証1部の全銘柄を対象にしているが、新しいTOPIXは一定の基準に基づいて数を絞り、対象に選ばれたり、対象から外れるケースを前提としている。しかし、それは既存のJPX日経インデックス400とどう違うのか。JPX日経インデックス400が活用されていない実態も含め、議論は一切なされていない。
日銀やGPIFへの影響は?
何よりも、現在のTOPIXの最大顧客といっていいGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)と日本銀行への影響を分析した形跡すらない。
日銀は年間6兆円ものETF買いを続け、2019年9月末の残高は27兆円に達している。GPIFも159兆円の運用資産のうち、日本株は38兆円強。その9割はパッシブ運用である(2019年3月末時点)。TOPIXの設計を変えることで、もっとも甚大な影響を受けるのはGPIFと日銀。つまり国民である。
「インデックスはさまざまな作り方があるが、東証1部上場会社を網羅するTOPIXは極めてシンプルな設計。今進めている議論はその設計を変更するという話。GPIFや日銀が使っている以上、そもそも設計自体、変更していいのかどうかから議論すべき」(前出の機関投資家)
結局、この1年の騒動は何だったのか。甚大な被害を被る市場参加者が出るような議論を唐突に始めたうえ、情報も出さずに報道を放置した東証の責任は重いことを、言い出しっぺの東証はそろそろ認めるべきだろう。
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