東証の「市場区分変更」、見えぬ議論の終着点 1部上場企業の「降格案」はなぜ消えたのか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

強制的な降格がないのであれば、東証1部は実質的に現状維持され、わざわざプライム市場を設ける必要性がどこにあるのか、よくわからなくなってくる。

誰もが知っている大企業でもない限り、東証1部というステータスは採用や商取引の場面ではかなり有効だ。正規の手続きを経て1部に昇格したのに、降格となれば失う信用は計りしれない。多くの中小型銘柄企業が混乱したのはこのためだ。中身が変わらないのであれば、呼称も変えてほしくないというのが、これらの企業の本音だろう。

時価総額で機械的に振り分けることはない

東証の懇談会と金融審議会の委員の両方を務める立正大学の池尾和人教授は、金融審の第2回会合で「東証の懇談会で議論していたときから、時価総額で機械的に振り分けるなどという乱暴な話はしていなかったのに、そういう印象を世の中に持たれる結果になった」と発言。報道を否定している。

さらに、第5回会合では「ガバナンスの高低でプライムとスタンダードに分けるというのなら、両社に上下関係が生まれるのは明らか。並列だと言うのは理屈として難しい」と突っ込んだ。

そして、同じ会合で「上場会社、つまりパブリックカンパニーとして、最低限備えていなければならないガバナンスの水準を越え、どこまでエクスプレイン(説明)するのかは、個別の企業の問題。市場区分で議論する話ではない。並列だというのなら、市場区分は3つではなくグロースとそれ以外の2つとすべき」と言い切った。予定調和とはおよそかけ離れた、極めて真っ当な議論が展開されたのだ。

もっとも、ある機関投資家は「2部市場というのはある意味懐の深い市場。小粒ながら隠れた優良企業が多数上場している一方で、降格になった東芝の受け皿になっていたり、地方市場が消滅したために2部に移行した企業など、さまざまな企業が混在している。水清ければ魚住まずで、こういった市場の存在も必要」と言う。

次ページインデックスをどう考えるか
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事