東証の「市場区分変更」、見えぬ議論の終着点 1部上場企業の「降格案」はなぜ消えたのか

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審議会はこれまで5回開催され、機関投資家や発行体企業、有識者などからヒアリングを行った。

投資家からは「TOPIXに流動性が乏しい銘柄が含まれていて問題」「TOPIXが問題だから市場区分を変えるという議論は本末転倒で、市場区分問題とインデックスの問題は切り離して考えるべき」などの声があがった。

上場会社4社などは「強制降格が実施されると、失う社会的信用は甚大」「赤字企業でもプライム市場に上場ができるように」などと訴え、大学教授からは「市場コンセプトがあいまいだから改革せよでは、改革で不利益を被る者は納得しない」、弁護士からは「一部の機関投資家の意見に依拠すべきでない」「コーポレートガバナンスコードの適用状況を降格基準に使うべきではない」などという指摘が出た。

事務局案は単なる看板のつけ替え

11月20日に事務局が出した論点整理案は、これらの意見をすべて盛り込んだかのような折衷案だ。

まず市場区分については、現在4ある市場を3に減らす。成長途上の企業を対象とする「グロース」、すでに実績がある企業のうち、高度なガバナンスを備えている企業を対象とする「プライム」、そうでない企業を対象とする「スタンダード」に分ける。

つまり、現在の東証1部はプライムに、2部とジャスダックのスタンダードを合体させてスタンダードに、マザーズとジャスダックグロースを合体させてグロースに、それぞれ看板をつけ替える案にすぎない。

しかもプライム市場への上場基準は、時価総額だけでなく流動性やガバナンスを組み合わせた基準としながら、具体的な数値には一切言及していない。すでに1部に上場している企業については、基準に満たなくても希望すればプライム市場への上場を認め、強制排除もしないという。

つまり、当初の「上場企業が多すぎるから減らす」という議論は跡形もなく葬られ、東証1部上場企業の降格問題は事実上なくなったのだ。

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