実家に帰り、「晴一さんとの結婚はやめようと思う」そう言ったら、父も母も仰天した。
「あなたもいい年なんだし、ここまで話が進んだものを壊してどうするの?」とオロオロしている母に、彼がどれほどお金に細かいかを、話して聞かせた。また辞めていく同期の送別会の費用を出し惜しんだり、テレビを見ながら不祥事を起こした政治家を口汚くののしったりした話もした。
すると、黙って聞いていた父が、口を開いた。
「晴一くんは、自分のためにはお金を使うが、人に使うのはもったいないと思ってしまう人なんだろうな。そういう男には、人望がない。本人は1円も無駄にしていないから得をしているつもりでいても、人生を長い目で見たら、実は大損をしている。“金は天下の回りもの”と言うけれど、人のためにお金が使えて、人のために働ける。結局そういう人のもとに、お金が戻ってくる」
確かにそのとおりだと思った。幸いまだ指輪も注文していない。結婚式場も決めていない。結婚をやめるのは、今のタイミングだと思った。
いい悪いの話ではなく、考え方や価値観が違っただけ
「結婚を白紙に戻したい」という話をすると、晴一は当然のことながら、最初は納得しなかった。何度か会って話し合い、その度に、「私はあなたとは結婚できない」「結婚する気持ちはなくなった」と言い続け、結婚話は破談となった。
ここまでの話を私にすると、絵都子は言った。
「もちろんない袖は振れないし、見えっ張りで散財してしまうのもどうかと思います。でも、今回学んだのは、お金の使い方に人間性が透けて見えるということです」
堅実にお金を管理して暮らすことは、決して悪いことではない。世の中には、つねにコスパを考えてお金を使う女性もいるだろう。そうした価値観を持っている者同士が結婚したら、きっとうまくいく。
しかし、絵都子はそれを窮屈に感じてしまった。それはお金に対する考え方や価値観が違うのだから、仕方がない。
絵都子の婚活が、このたび再スタートする。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら