支払っていたのは、相談所の規則だったから
4カ月ほど前のこと。「先日婚約破棄をした」という榎本麻里絵(仮名、35歳)が面談にやってきた。親戚の経営する会社で、経理事務をしているという。おとなしい、品のいい印象を受ける女性だった。
麻里絵は、言った。
「大手相談所で出会い、婚約した男性がいました。お見合いからデート期間中は、お茶代も食事代も私の分はお支払いしてくれたのに、退会してからは私からお金を取るようになりました。その後、指輪代や結婚式の費用など、お金の話になると、きっちり折半するんです。
浪費家は困りますけど、何でもかんでも支払いが平等という彼の考えに、何か男としての器の小ささを感じてしまい、気持ちが冷めてしまった。結局婚約は破棄をしました」
婚約したのは、同い歳の藤倉亮一(仮名)。大手メーカーに勤める、年収600万円の男性だった。
「相談所でお付き合いをしていたときに、お茶や食事代のデート代を払ってくれていたのは、仲人さんから、『お支払いは男性がしてくださいね』と言われていたからだそうです。その頃から“男だけが払うのはヘンなシステムだな”と疑問を抱いていたようです」
そして、成婚退会をし、その後のデートのときにこう切り出された。
「これから結婚に向けて、お金もかかるようになるよね。いろいろ話し合いながらやっていこう」
言われるがまま、「そうね」と返事をした麻里絵だったが、ランチを終えてカフェを出るときに、亮一の言葉の真意を理解した。伝票を取って席を立とうとしている彼が、こう発したからだ。
「1人980円で消費税がかかるから、1000円もらってもいい?」
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