「この間、ネットで結婚準備のことをいろいろ調べていたら、“男が婚約指輪を贈ったら、女性は3分の1程度の値段の記念品をお返しする”らしいよ。あと、結婚指輪はお互いがお金を出して買うというのが一般的みたいだね。婚約指輪のお返しはさておき、結婚指輪の16万円はもらってもいいかな」
ダイヤのきらめきに夢見心地だったが、冷や水を浴びせられたように現実に引き戻された。
そのときのことを、麻里絵は私にこう言った。
「それで、私も家に帰ってきてネットで調べたんです。有名な結婚情報誌のサイトには、確かに“婚約指輪のお返しには3分の1くらいの金額で、男性が日常で使う時計やスーツなどを贈る”って出ていました。ただそこには、何百人かに聞いたアンケート結果も載っていて、そうやってお返しをしている女性は全体の60パーセントくらいでした」
今どきの結婚の支度金事情
そのことを実家の親に電話で告げた。すると、母が言った。
「あら、そうなの? じゃあ、婚約指輪のお返しを何かしないとね。結婚指輪のお金も16万円お支払いしないと。それにしても、随分お金にキッチリとした人なのね。今回は、結納金もないのと同じだし。葉子のときは結納金いただいたけど」
姉・葉子のときとは勝手が違うことに、母親も苦笑いするとともに驚いていた。というのも結納金については、亮一の実家にあいさつに行ったときに、こんなことを言われたからだ。
「今の時代なので、結納金というのもおかしな話ですよね。その代わり、結婚の支度金として、亮一の銀行口座にまとまったお金を私たちから振り込むので、新居を構える準備資金の一部に当ててください」
これを聞いたときに、麻里絵は思った。結納金ならば女性側がもらうので、支度金として自由に使える。でも、亮一の口座に入っているお金は勝手に引き出せないし、亮一の了解のもと結婚資金に充てることになる。
この話を両親にしたときにも、「あら、そんなことを言ってるの。じゃあ、ウチでも、あなたの口座にまとまったお金を入れるから、それを結婚の準備資金にしなさい」
そして、次のデートで亮一に会ったときに、指輪にまつわるお金の話をした。
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