「結婚でお金がかかるようになるから、いろいろ話し合いながらやっていく」というのは、「これから食事代などのデート代は、“割り勘で”という意味だった。
「ウチでは、家族で食事をすると、そこの支払いは父がする。母はお財布を開いたことがなかった。だから、“男性が払って当たり前”という考え方が身に付いていたんだと思います。あと、33歳のときから結婚相談所で活動をしていますが、デートすると男性がお支払いをしてくださるので、それが当たり前になっていた。逆に割り勘にしてくる男性は、お断りしていました」
父母へのお土産はあっても、姉夫婦にはナシ
成婚退会した翌月には、亮一が麻里絵の実家に結婚のあいさつにやってきた。両親だけでなく20代で結婚をした3つ上の姉・葉子とその夫・正彦(ともに仮名)、2人の姪も実家に集い、亮一を迎えた。
そのときのことを麻里絵は、私にこんなふうに回顧した。
「姉夫婦が子どもを連れてくるというのは、伝えてあったんです。亮一さんは、両親へのお土産には老舗和菓子屋のようかんを持ってきました。でも、姉夫婦には何のお土産もなかった。私たちのために時間を作って家族で来てくれたのだから、そこは気を使ってほしかった」
そしてその翌々週には、北海道の亮一の実家にあいさつに行くことになった。飛行機のチケットを亮一が取ってくれたのだが、2枚分の料金レシートを見せられ、その半額を請求された。
「弟さんご夫婦も来てくださると聞いていたので、私はご両親へのお土産と弟さんご夫婦へのお土産を用意して、ごあいさつに伺いました。弟さん夫婦には3歳になる男の子がいると聞いたので、絵本も持っていきました」
亮一の両親も弟夫婦も、笑顔で迎えてくれた。北海道は、魚介類がおいしい。サーモン、いくら、ウニなどの新鮮な魚介類を食卓に並べて、もてなしてくれた。また両親だけでなく、弟さん夫婦や子どもにまでお土産を持っていったことにしきりに恐縮しながらも、とても喜んでくれた。
「亮一さんも、『弟たちにまで、ありがとう。気がきくね』と言ってくれたので、結婚したら、“こういうことを少しずつ彼ができるように私が助言していけばいいや”と思っていました」
こうして、結婚話はどんどん進んでいったのだが、かかったお金をきっちり割り勘にしていく亮一に、何か心の中でモヤモヤするものを感じるようになっていった。
ある週末、婚約指輪を買いに行くことになった。
「銀座にある有名ブランド店に行って、50万円のダイヤの指輪を買っていただきました。同じ店で結婚指輪も一緒に買ったのですが、ブランド店だったので、1人16万円でした」
指輪の裏側に2人の名前を刻印してもらうことになったので、その日は指輪を受け取ることはなく、亮一がカードで支払いをして店を後にした。
その2週間後に2人で指輪を取りに行き、その後銀座でランチをした。
左手の薬指にはめたダイヤの指輪を麻里絵がうっとりと眺めていると、亮一から、驚きの言葉が飛び出した。
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