「結婚指輪のお金は、払うね。でも、婚約指輪のお返しは、する人としない人といるみたい。ただ親も、『ちゃんとお返ししなさい』と言っているので、何か記念になるものを買おうと思うんだけど、何がいい?」
すると、亮一がとてもうれしそうな顔で言った。
「本当? じゃあ欲しいパソコンがあるんだけれど、それを買ってもらってもいいかな。多分、15万円くらいだと思うんだけれど」
遠慮する様子もなく、ちゃっかりとパソコンを笑顔でねだる彼に、興ざめするものを感じた。
姉の夫に比べて自分の夫になる人は…
ここまで話すと、麻里絵は私に言った。
「私も働いているし、男女平等の時代なんだから、女性側も甘えていないで、お金を払払うのが当たり前なのは、理屈ではわかるんです。でも、なんだろう。
彼には“私を喜ばせたい”とか、“自分のほうが稼いでいるのだから、少し多く出してあげよう”とか、そういう思いはないのかなって。大切にされていないような気持ちになってしまったんです」
そして、母親も言っていたように、姉の夫の正彦との違いに愕然とした。なんだか自分が結婚相手を選び間違えたような気持ちになった。
「姉は25歳のときに、10歳上の義兄と結婚しました。結納金もあったし、婚約指輪も結婚指輪も義兄が買ったし、2人が住むマンションも用意してくれた。姉が払ったのは、結婚式にかかった半分の金額だけだったと聞いています」
ただ、義兄の正彦と亮一では、稼ぎも違うし、育った環境も実家の資産も違う。それは、最初からわかっていたことだ。
正彦の実家は、地元に500坪の家を構え、その地域の地主でマンションや駐車場も複数所有していた。正彦自身も上場企業に勤め、姉と結婚するとき、年収は1000万円を超えていた。
「義兄は、実家の親と私と姉の家族で外で食事をすると、お店を出るときにすっと伝票を持って支払いを済ませてしまう、そんな人なんです。とにかくお金の使い方がスマート。そういうのをずっと見てきて、“すてきだな。男はこうでなくっちゃ”って思ってたのに、自分が結婚しようと思っている男性は、全然違ってたんです」
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