それでは文系学部出身の社員は入社後に活躍しているのか。まずは東日本支社・販売推進部の小谷啓太さん(29)に話を聞いた。小谷さんは国士舘大学21世紀アジア学部で韓国語を専攻した。機械とは直接結びつかない学部の出身だ。
現在はカプラを中心に販売しているが、最終ユーザーをしらみつぶしに訪問するといった営業ではなく、商社と一緒に販売戦略を立てながら提案営業を行っている。小谷さんは入社3年目の25歳のときに、赴任先の静岡で展示会「アタックフェア」を大成功させた実績を持つ。
アタックフェアの責任者に任命された小谷さんは、会場選びから会場レイアウト、設営、集客などすべてを担当した。その結果、同地域での前回の展示会動員数が200人だったのに対し、4倍の800人を集めることができた。この数字は記録的なもので、当時「小谷がすごいことをやったと社内で話題になった」(人事部)。
鈴木:展示会での動員に成功した要因は何ですか。
小谷啓太さん(以下、小谷):最終ユーザーを集めるには、弊社とユーザーの間にいる商社さんをその気にさせる必要があります。商社とユーザーに展示会へ出席するメリットを実感してもらわなければなりません。こうしたときに役立つのは日頃のつき合いです。文系も理系も関係ありません。
大亀:文系であることに不利を感じたことはありますか。
小谷:私の場合は入社後に東京で半年間の研修がありました。その後、静岡支社に配属されましたが、最初から1人で仕事をしたわけではありません。専門用語などでやや苦労しましたが、先輩社員がマンツーマンで指導してくれました。先輩と行動を共にして、先輩の商談を見ながら仕事を覚えていきました。製品を使っているのは理系出身のエンジニアだけではありません。文系の人もいます。そういった場合は、文系の私がかみ砕いて説明したほうがいいこともあります。文系が不利とは限りません。
日東工器では国立大学・文学部史学科卒の女性社員(32)にも話を聞いた。現在は商品の受発注や顧客からの電話対応、さらに製品の生産計画に携わっている。受発注や電話対応には豊富な製品知識が必要であるのは言うまでもない。
また、生産計画を立てるときは自分たちの部署だけでなく、生産管理部門や工場と連携する。「今この製品が売れ筋だからこの出荷を増やそう」といったことを決める、会社の司令塔のような仕事である。営業のように表には出ないが、こうした重要な仕事を文系出身でも担当することができる
新卒文系社員の4割が技術開発職を選ぶディスコ
ディスコは半導体や電子部品の精密加工装置を製造している。海外売上比率は80%超。「ダイシングソー」と呼ばれる切断装置の世界シェアは8割、「グラインダ」と呼ばれる研削装置の世界シェアは7割。そのほか高輝度LED向け加工装置の世界シェアは10割と圧倒的。半導体メーカー世界トップのインテル社から優秀なサプライヤーとして表彰されるほど技術力が高い。
2019年卒の新入社員のうち約半数が文系出身。文系出身の学生であっても技術開発系へ進む人が4割もいる。ディスコでは入社するとアプリケーション大学(AP大学)というOJTのための部署に配属される。そこで1~2年間、加工関連の技術を身に付けつつ、自分が興味のある部署の仕事も並行して経験できるようになっている。
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