山下氏は30代半ばという若さで、この重大なプロジェクトに加わった。M&A成立後もドイツに駐在してヘルスケア事業を担当し、欧州内の関係会社のマネジメントを行った。帰国後はM&Aや海外事業の経験を社内で共有するための勉強会を開催している。
蔭平:文系・理系関係なくチャンスがあるのですね。

山下:入社して10年ぐらいで大きなチャンスがあるでしょう。最近は事業範囲が広がっているのでもっと早いかもしれません。化学メーカーは素材を作っていますが、素材はあらゆる産業分野と関連するのでいろいろなビジネスを展開することが可能です。自分で事業を企画立案し製造や開発の人たちを引っ張っていくぐらいの意識が必要です。
在籍社員の半数は文系出身の日東工器
日東工器は水・油・ガスなどが通る配管の簡易接続器具である「カプラ」の国内トップメーカー。自動車や半導体などの製造工場はもちろん、建設現場、一般家庭などあらゆる場所に配管がめぐらされているが、その配管の接続にカプラが使用されている。
水素を活用して走行する燃料電池自動車の車両側充填口には同社のカプラが使用されている。また車両に水素を注入するホースの先にあるノズルも同社製だ。同社の技術がなければ燃料電池自動車は走行できない。
同社は技術力の高さを背景に市場シェアが高く、創業してから赤字決算が1度もないほど経営が安定している。無借金で自己資本比率が87%と財務体質も極めて良好だが、製品自体が目立たないことから文系学生の間での認知度は高くない。
採用人数や文・理系の比率は年によって異なるが、社員の約半数が文系学部出身であるし、小形明誠社長は経済学部出身。文系学生が入社しにくい会社ではない。
日東工器には明治大学商学部の大亀雅秀さんと鈴木佳裕さんが取材した。最初に人事部の高橋佑子さんにインタビューした。
鈴木佳裕さん(以下、鈴木):文系はとりあえず営業部門に配属されるのですか。
高橋佑子さん(以下、高橋):文系卒で入社してもさまざまなキャリアパスがあります。営業はもちろんですが人事や総務などの管理部門に配属されることもあります。また情報システム部でSEの職種につくこともあります。採用の文・理比率は年度によって異なりますが、在籍社員の文・理比率は半々です。
大亀雅秀さん(以下、大亀):文系は製品に関する知識はありませんが、どのように知識を身に付けていくのですか。
高橋:内定時点(大学4年時)と入社後すぐの時点で工場へ行って生産現場を見ていただきます。また、入社して数カ月は顧客からの製品の問い合わせ業務をこなしたり、物流センターで製品管理をしたりすることで、どんな製品がどのようなルートで顧客に届くか理解していただきます。
顧客からの問い合わせに対応するには豊富な製品知識が必要で、自ずと製品を勉強することになる。入社して物流センターで製品管理となれば、いかにも文系社員が虐げられているようなイメージだがそんなことはない。製品を手に取って仕事をすることで製品知識が増えていくのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら