上げるならボーナス
そのような中で、唯一、賃金の上昇余地があるとすれば、始めに述べた賃金の構成要素の2つ目である賞与です。そもそも賞与の性質は「賞として与える」ものですから、業績に連動する一時的な報奨金です(もちろん給与の後払い的性格もありますが一般的な意味で)。その年度が好業績であればそれこそ、一時的な賞として、まさに賞与として支給すべきだと思います。
以上が理論(理屈)なわけですが、賞与のほうが賃金上昇項目として望ましい理由を、もうひとつだけ付け加えておきます。
企業には給与制度があります。その制度に基づいて給与が決まります。昇給も同様で、そこには根拠があり基準があり幅があるわけです。それが、企業が組織で動く仕組みでありルールというものです。そのルールにのっとっていればよいですが、単純に企業の業績がよいから社員に還元するというのは、単純すぎて意味不明です。恣意的すぎて発想が浅すぎます。
基本給にも賞与にも、つねに算出ロジックがあります。その算出ロジックが業績と連動するものであれば還元するし、そうでなければ還元されません。その算出ロジックが業績と連動するのは、多くの場合、基本給ではなく賞与です。よく考えるとそれだけの話です。
給与という重要なものを、ルールにのっとらずに恣意的に上げたり下げたりするほうが、むしろおかしな話です。そういう中で賞与だけはその算出ロジックも業績と連動する場合が多いですし、そうでなくても外枠の一時金であれば、実質賞与の上乗せ分として会社の判断で決めやすい要素です。したがって賞与・一時金に企業業績を反映するということは、ガバナンスの意味だけでなく、将来の企業負担においても株主への説明責任においても、許容されるのではないかと思います。
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