好業績の会社は、賃金を上げるべきなのか?

世界はそんなにシンプルでもない

何でも単純化すればいいのではない

そもそも業績が上がり、自由に使えるキャッシュが増えたとしたら、そのベストな使い道を考えるのは経営者の責任です。その中身は株主への配当かもしれません。ビジネスを拡大するための投資かもしれません。今後のリスクに備えるために「貯金」としてため込んでおくかもしれません。業績の上昇も下降も、一義的にはその責任は経営者にある以上、キャッシュの使い道を決める権利も経営者にあります。総論だけ言えば、社員に還元するのはよいことだと思いますが、各論に入っていくと、そこは単純にできない理由があります。

要するに物事が、何でも単純化してうまくいったら苦労はないということです。
何でも単純化すればうまくいくという人がたまにいますが、世の中は単純ではなくとても複雑なものだと思います。大企業は意思決定が遅いなどと、意思決定の慎重さを否定的な意味で使われ、一方で意思決定の速さがやたらにもてはやされていますが、その意思決定の速さの半分くらいは、私には考えなしで決めているように見えますし、枝葉をばっさりやる場合の半分以上は、少数意見の配慮や寄り添い方が足りないように見えます。

もちろん最終的にはひとつの結論を出さなければいけないし、その時点での結論・仮説をつねに持ち続けるのは当然なわけですが、でもその結論のためにあらゆる道筋を考え尽くして、うなるほど眠れなくなるほど悩むことが(時々は)必要ではないかと思います。

悩んでも結論は変わらないかもしれません。でも悩みぬいてたどり着いた結論は、もし間違っても後悔は(おそらく)少ないと思います。間違いに至ったプロセスでその原因究明の道筋を追いかけることは、次回以降の成功の再現性を高めるためにもとても意味があることです。

なんだか今回は硬いテーマから入り、最後は心の叫びのように脱線してしまいました。思い起こせば、「物事はシンプルに!」でざっくりと思考することができない私の、ささやかな言い訳と抵抗が、行間からにじみ出るだけでは飽き足らず、最後に発露してしまったような気もします。

※ 本文は筆者の個人的見解であり、所属する組織・団体を代表するものではありません。

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