アベノミクスに致命的な欠陥あり

収益快進撃・JCUの粕谷佳允会長に聞く

JCU代表取締役会長 粕谷佳允
2003年、表面処理薬品の中堅メーカー、荏原ユージライト(現JCU)の粕谷佳允社長(当時)は親会社の荏原から「会社を売る」と宣告された。「ちょっと待ってくれ。売るというなら、私が買いましょう」。「カネはどうする」。「カネは天下の回りもの。銀行か証券会社か、あるところから借りてくる」。売り言葉に買い言葉だった。MBO(経営者による買収)から2年で東証2部上場を果たし、07年に東証1部に指定替え。売り上げはMBO前の2・5倍に伸びた。「会社を売るなんて経営者として最低。従業員とその家族の生活を犠牲にするということなんですから」。会社も国家もマネジメント次第。日本製造業の一員として、真正面から安倍首相の成長戦略に注文を付ける。

――かねて自社のホームページで「安倍首相の成長戦略に疑義あり」とおっしゃっています。

安倍首相の成長戦略は抽象的で具体性がない。これでは国民や企業は動けない。安倍さんに致命的に欠けているのは製造業への理解です。今、日本経済が停滞しているのは、パナソニックやシャープなどエレクトロニクス産業が元気を喪失し没落したからです。弱電のみならず、東芝、日立、三菱の重電も往年の勢いがない。製造業の中核が弱っているのです。国内の投資と雇用を増やし、日本を復活させようと思うなら、まず弱った製造業を復活させねばならない。

ところが、産業競争力会議のメンバーに新浪(剛史・ローソン社長)さんや三木谷(浩史・楽天社長)さんを選んだ。このことに象徴されるように、安倍さんの関心はどうやら三次産業のサービス・流通業に向いている。TPPへの参加を決めてからは農業の方にも気持ちが傾いた。しかし、安倍さんが真剣に考えなければならないのは、製造業の復活です。そこに頭が行っていない。

原発輸出は無責任

――とは言え、安倍首相は原発輸出などに熱心に取り組んでいます。

だから、製造業が分かっていない、と言うんです。東芝、日立、三菱の重電3社で原発を設計できるエンジニアはそれぞれ500人程度でしょう。周辺を含めてもやっと2000人くらい。東大でさえ原子力工学科をなくしてしまった。日本はこれから国内で廃炉に着手しなければならないというのに、その技術者さえ十分いない。そんな状態で原発を輸出してどうするんですか。売ったはいいが、現地で技術を教える人も、メンテする人もいない。まさに売りっぱなし。こんな無責任な話はない。

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