B2Bシフトから1年、パナソニックの課題 構造改革にメド、再成長への正念場はこれから

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2012年6月就任の津賀一宏社長は「B2B事業の最大化」を目指す(撮影:今井康一)

「かつてはB2B(法人向け)の製品の展示などわずかしかなかった。同じ会社なのに、様変わりした」

1月7~10日に米ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「インターナショナルCES」の展示ブースで、パナソニックの説明員はそう語った。CESは、家電各社が自社の目玉製品や経営戦略を披露する場。2期連続で7000億円を超える巨額赤字に陥ったパナソニックが、そこで反転攻勢の旗印として大々的にPRしたのは、法人向け製品だった。

その一つが高精細の4K液晶パネル。韓国サムスン電子やLGエレクトロニクスが曲げられるテレビの技術を競う中、パナソニックはイベントなどに使われる法人向けのディスプレーを重点的に展示した。有機ELパネルについても、パナソニックはテレビではなく、屋外広告用の巨大ディスプレーとして出品した。

CESで大きな注目を集めたウエアラブルデバイス(身に着けて使う端末)に関しても、パナソニックの法人向け重視の考え方は変わらない。家電を声で操作できるネックレス型や腕時計型のウエアラブルリモコンを発表したが、展示したのは展示スペースではなく、裏手にある商談スペースだった。「すでに住宅メーカーなど数十社が商談に訪れた。顧客と相談しながら用途を広げる」とパナソニックの担当者は話す。

「他社の派手な展示は素人受けするかもしれないが、われわれはB2Bを意識して、じっくり見ていただけるようにした」。津賀一宏社長は、CESの会場でそう強調した。今年は来場者の目に留まる象徴的な製品がない、との声が社員からも上がっていたが、「かつてのデジタルテレビのような、グローバルに象徴となるものは追っていない。むしろそれを追いすぎたことを反省している」と言う。

振り返れば1年前。前回のCESの基調講演で、就任後半年の津賀社長が高らかに宣言したのが、「B2Bシフト」だった。3月には赤字事業の改革と法人向け強化を柱とする3カ年計画を発表。今年のCESは、1年間の成果を披露する場だったといえる。

さらに津賀社長は、従来の経営姿勢からの変化も見せた。新中期計画では、利益率を重視すると公言していた。が、一転して「攻勢を始めるには売り上げを伸ばすに尽きる」(津賀社長)と、売り上げを重視する方針を鮮明にしたのだ。

パナソニックの2013年4~9月期業績は、売上高3兆7063億円(前期比1.9%増)、営業利益1465億円(同67.8%増)と回復基調にある。株価も右肩上がりが続いている(図)。

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