NEC、ビッグローブ売却でも晴れぬ視界 投資ファンドとの交渉大詰め

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NECの子会社でネット接続(ISP)・ポータルサービス大手、NECビッグローブの売却交渉が最終段階を迎えている。

売却先として、投資ファンドの日本産業パートナーズが最有力であることがわかった。同ファンドは2002年に設立されたみずほ証券系のファンドだ。NECからの事業取得は今回が初めてではなく、04年にNECのレーザー加工機事業を取得している。

NECビッグローブはここ2~3年、営業利益30億円台を稼いできた黒字会社。ただNECが売却するのは既定路線となっている(関連記事『黒字なのにビッグローブが売り払われるワケ』)。ネット接続の主役がパソコンから携帯端末へ移行する中、パソコン中心に事業を展開するビッグローブの先行きには、閉塞感が強まっているからだ。

NECの戦略が変わったこともある。同社は昨年、海外でのITサービス、社会インフラなどのBtoB(法人間取引)事業に経営資源を振り向け、国内でのBtoC(一般消費者との取引)事業からは手を引く方針を打ち出している。

その流れに沿って、2013年6月に携帯電話販売代理店の子会社NECモバイリングの売却、7月にスマートフォン新規開発からの撤退を表明してきた。ビッグローブの売却もこの延長戦上にある。

NECは今回の件について、「株式売却も含め、さまざまな検討を行っているが、決定した事実はない」としている。

見えない再成長への道筋

ビッグローブの買収には、同業のソネットや総合商社の伊藤忠商事などが名乗りを上げていた。日本産業パートナーズへの売却額は700億円に上るとみられる。その場合、NECの得る売却益は300億円超となる見込みだ。

NECにとっての課題は「売却後」。得た資金を成長へとつなげていけるか、だ。

同社が成長分野に掲げる海外事業。その主力の一つである通信事業者向け基地局事業は、ファーウェイやZTEなど中国企業が勢力を拡大しており、価格競争に勝てていない。海外事業全体も赤字に悩まされている。このままでは投資を続けても、水泡に帰すことになりかねない。

日本産業パートナーズへのビッグローブ売却報道が伝わった1月21日、NECの株価は1%の小幅な上昇にとどまった。事業の「選択と集中」に取り組んできたが、2013年4~9月期の売上高は1兆3831億円(前年同期比4.5%減)、営業利益3億円(同99.2%減)と苦しい状況にあり、再成長への道筋もいまだ見えてこない。伸び悩む株価は、NECに対する市場の懐疑的な見方を映し出している。

西澤 佑介 東洋経済 記者

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にしざわ ゆうすけ / Yusuke Nishizawa

1981年生まれ。2006年大阪大学大学院経済学研究科卒、東洋経済新報社入社。自動車、電機、商社、不動産などの業界担当記者、19年10月『会社四季報 業界地図』編集長、22年10月より『週刊東洋経済』副編集長

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