B2Bシフトから1年、パナソニックの課題 構造改革にメド、再成長への正念場はこれから

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ただその中身を見ると、円安や住宅事業での消費増税前の駆け込み需要など外部要因に支えられたという事情がある。「円安によって売り上げができただけ。現地通貨ベースで、攻勢をかけることはできていない」(津賀社長)。

通期の営業利益は2700億円を計画するが、大きく寄与するのは、売り上げの増加よりも、生産拠点再編やそれに伴う人件費削減だ。

パナソニックは昨年秋以降、赤字事業に大ナタを振るっている。国内の個人向けスマートフォンの開発休止に加え、巨額赤字の元凶とされたプラズマパネル事業からの撤退を表明。子会社の社員約250人は今期中に退職を余儀なくされる。

赤字解消が最優先

重しとなっていた半導体事業は、国内7拠点のうち岡山工場の閉鎖を発表。北陸にある3拠点についても、イスラエルの半導体メーカーと合弁会社を設立し、生産ラインを移管する予定だ。「とにかく外部の協力を得て、稼働率を上げることに重点を置いた」(半導体事業部担当者)。今後は海外を中心に大幅な人員削減も見込まれる。不採算のシステムLSI(大規模集積回路)事業は、富士通との合弁設立に向けた交渉が続く。

間接部門のスリム化も進めている。11年に完全子会社化した三洋電機では、パナソニックへの出向者を除く社員のうち、本部在籍の約250人を対象に希望退職を募る。

「会議ではいつも、社長に『それで赤字が解消するのか』と聞かれる」(パナソニック幹部)ほど、最優先で取り組んだ赤字の「止血」は、仕上げ段階に入った。

一連の改革のメドをつけ、今後問われるのが、売り上げの拡大。そのカギを握るのが、CESで積極的にアピールした法人向け事業だ。

社内では目下、B2Bへの事業転換が進む。前述のウエアラブルリモコンも、個人向けビデオカメラの音声認識技術を活用している。今年1月にはクラウドサービスを提供する子会社を設立したが、そこには、新製品の開発を休止した個人向けスマホの開発者らを配置転換する。

ただ、「B2Bは息の長いビジネス。簡単に成果は出ない」(パナソニック関係者)。

同社が世界シェア約8割を握るアビオニクス(航空機内AV機器)は、津賀社長が優等生として挙げる優良事業。担当するポール・マージス事業部長は、旧松下電器産業のラジオ事業部が最初に航空機向けに納入した時代からの30年以上の歴史を振り返り、「短期的な受注より、長期的な関係性の構築が重要」と話す。パナソニックが現在強化している自動車向けなども、そうした部分は同じで、急成長させるのは簡単ではない。

種をまいた法人向け事業を早期に収益拡大に結び付けられるか。14年のパナソニックの大きな試練だ。

週刊東洋経済2014年1月25日号<20日発売>、核心リポート02)

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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