10代スマホ所有率「うつ・自殺」との不吉な関係 「常時つながっている」ことがもたらす危険
アメリカの若者の世代ごとの意識変化に関して世界クラスの専門家であるジーン・トウェンジ(サンディエゴ州立大学心理学教授)は、1995年から2012年までに生まれた層を「i世代」と呼んでいる。彼らには、1980年代から2000年ごろまでに生まれたミレニアル世代とは明らかに異なる特徴があった。
最大の、そして最も不吉な変化は、メンタルヘルス(精神面の健康)だ。「10代のうつと自殺の率は急上昇している」とトウェンジは書いている。その大半は不安障害が急激に増えたことに要因がありそうだ。「i世代は過去数十年でメンタルヘルスがもっとも悪化した世代になりそうだといっても過言ではない」。
不安障害増加と一致する「現象」
この変化の要因は何か。トウェンジによれば、こういったメンタルヘルスの変化は、アメリカ人の多くがスマートフォンを所有するようになった時期と「ぴったり」符合するのだ。トウェンジは、スマートフォンを悪者にしようという意図が初めからあったわけではないと明言している。
「10代のメンタルヘルスが悪化している理由として、あまりにも安直だという気がした」が、タイミングが一致する原因はそれしか見つからなかった。学業のプレッシャーの増大といったほかの原因候補は、不安障害が急増した2011年以前から存在していた。不安障害の増加と時期を同じくして劇的に増加した要因は1つだけだった。若年層のスマートフォンの所有率だ。
i世代が抱える問題は、「孤独の欠乏」がどのような危険をもたらしかねないか、強い警告を発している。1人きりで考えごとをして過ごす時間が生活から排除された結果、その世代のメンタルヘルスは劇的に悪化した。
考えてみれば当然の結果だろう。この世代の若者は、自分の感情を観察して理解する能力を失っている。自分は何者なのか、本当に大切なものは何かを知るために内面を探る能力、強靱な人間関係を築く能力も失った。
さらにいうなら、生存に必要不可欠な脳内の社交回路──そもそもこれは休みなく使い続けるように作られていない──をパワーダウンし、その分のエネルギーをほかの重要な認知の維持管理作業に振り向けることさえ許されないのだ。適切な維持管理がされていないのだから、不調を来したとしても驚くには値しない。
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