誠品書店は「日本が学ぶべき店」と断言する理由 単なる「オシャレな書店」や「雑貨屋」じゃない

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(2) 地下街や百貨店などの再生事業にも貢献

もう1つ注目すべきは、エリアの再生に寄与する取り組みです。台北には地下鉄駅の周辺を中心にして多層の地下街がいくつも存在しています。しかし中には衰退し、空き店舗が立ち並ぶようなところもあります。そのような中で、MRT中山駅地下の一部を誠品書店が一体的に借り上げて「誠品R79」という商業エリアとして再生しています。

駅の地下の一部を借り上げて「R79」という商業エリアとして再生している(筆者撮影)

さらに、MRT中山駅上にあった三越グループの「新光三越」の2館が閉店し、誠品生活南西として再生し人気を集めています。人口集積があるとはいえ、百貨店数がそもそも多い台北市内において、規模感的にも中途半端な床面積の商業施設を人気の商業スポットに変えるのは難しいわけですが、誠品グループはうまく転換させています。

この手の再生プロジェクトは、ともすれば「地元の中小事業によるまちづくり活動」とばかり思われている日本とは大いに異なっています。再生を1つのビジネスチャンスと見極め、適切な投資を行っている誠品グループから、日本の大手企業も刺激を受けてもらいたいと思うところです。

はやりに乗らず、優れたものを成長させていくスタイル

(3) メイドイン台湾にこだわり、メーカーやデザイナー発掘

誠品書店が非常に興味深いのは、もともとの文化芸術などに関する書籍を取り扱っていたこともあるのか、決して商業的な流行に乗った売り場づくりをしないことです。それを踏まえたうえで、台湾全土の中から優れた新興の商品メーカーやデザイナーなどを発掘したり、それらを育成して成長させていくというスタイルをとっています。

実際、はやっていて、どこでも取り扱っているものを売り場に並べるのは、ただでさえ非常に激しい小売り競争に自らを巻き込んでいくようなものです。そこへ行くと、誠品は、初期の段階で、支援する生まれたてのメーカーなどに資本なども一部入れながら育成し、人気ブランドへと成長させていくという手法もとっています。こうしたことで、誠品自体も小売りの流通だけでは得られない利益を得られ、さらに誠品の独自のブランドポジションを形成することにもつながっていると言えます。

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