誠品書店は「日本が学ぶべき店」と断言する理由 単なる「オシャレな書店」や「雑貨屋」じゃない

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(1) 歴史的建造物などを活用、文化創造産業に貢献

台北のエリアリノベーションの人気スポットとしては、華山1914文創園区、松山文創園区などがあります。文創とは2002年にスタートした台湾における政策の1つです。

すなわち「文化創造産業発展計画」が発表され、「クリエイティブ産業を台湾の主力産業にしよう」という目的で行われてきています。

その中でも、松山文創園区には日本統治時代のタバコ工場がリノベーションされ、台湾デザインセンターが入居したり、巨大倉庫ではさまざまな劇やアートイベントが開催されていたりします。

その同一敷地にPFI方式(民間の力を活用した公共施設の運営などの手法)での再開発が行われ、そのテナントとして誠品グループが「誠品行旅」というホテルと「誠品生活」という商業店舗を複合で出店しています。

リノベーション地区である「松山文創園区」にある、グループのホテル「誠品行旅」。すぐ横には日本の台湾統治時代のタバコ工場をリノベした台湾デザインセンターも(筆者撮影)

「公民連携」がうまく回っているモデルケース

また、台北などの主要都市のみならず、台中市と台南市の中間あたりに存在している雲林県には、日本統治時代の消防署を活用したリノベーション店舗である「誠品虎尾店」を出店するなど、中小規模店舗についても誠品書店は台湾各地に展開しています。

誠品虎尾店。これも日本統治時代の消防署をリノベした店舗だ(筆者撮影)

つまり、デザインや飲食、エンターテインメントといった、今後成長力があり、付加価値生産力のある文化創造産業というカテゴリに貢献しながら、歴史的建造物などの効果的活用なども行っているわけです。産業政策と歴史的建造物活用が組み合わされ、そこを民間企業として誠品グループも支えているという、まさに「公民連携」のモデルです。

この方向性は、戦後建てられた名建築や戦前から続く歴史的建造物のような行政資産さえ区画整理や再開発を行い、バンバン高層ビルやタワーマンション開発を進めて、どこの都市も均質化している日本とは対照的ではないでしょうか。

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