STAP細胞「女性・30歳」報道は日韓だけ? なぜ年齢と性別が、これほど重視されてしまうのか

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研究に性別は関係するか?

でも、研究者にとって、性別は(本来は)意味のない属性です。女だろうが、男だろうが、よい研究が評価される。それだけのことです。私はジェンダー論という女性の多い分野の数少ない男性だったので、「男だからわかっていない」と自分の性別と絡めて自分の議論が解釈されるというのは、やはりつらい経験でした。「そやけど、おまえかて男性をウリにして、これ書いとるやないか!」。あ、すんません。「男性だから」と、取り上げてもらえることがあるのも事実です。でも小保方さんの場合は研究内容を考えても、性別は何の関係もないはずです。

気になったので、外国のメディアの報道を調べてみました。「日本的な報道の仕方では」と感じたからです。「ニューヨークタイムズ」は、今回『ネイチャー』に掲載された論文の共著者のひとりであるヴァカンティ博士にインタビューし、この研究の革新性を解説しています。

理系の研究は研究室単位で、分業態勢をとりながら進めていくので、1本の論文でも複数の著者が列挙されるのが普通です。そして、そのうち最も貢献した人の名前が最初に出ます。小保方さんについては、この共著論文の筆頭著者であると紹介され、もともとは大学院生としてヴァカンティ氏の研究室で発想を温め、彼女が研究の主要な部分を担ったと書かれていますが、年齢には触れていません。アメリカでは一般的に、こういった場合に年齢に言及することは差別的であると考えられており、履歴書にも年齢は書かないのが普通です。当たり前ですが、割烹着なんて話題は出てきません。

中国の「新華網」では、「日米の共同研究による万能細胞」としながら、研究者の名前はなし「中国日報網」は日本の報道を引用して一連の内容を紹介し、小保方さんの名前を挙げていますが、年齢には触れていません。「研究グループの責任者」として彼女の名前が挙がっているので、中国語だけ読むと「若い女性」という連想は働かないはずです。連想が働かない、ということ自体が差別的思考ですが。

台湾の「聯合報(電子版)」はやはり「万能細胞」に注目し、リーダーとして小保方さんを紹介していますが、年齢はなし「中央通訊社」年齢あり。変わったところでは、民放大手「台湾電視」のウェブサイト「台視ニュース」「美人科学者の率いるチームが5年の歳月をかけて、この万能細胞を発見した」としていますが、小保方さんの名前も年齢もありません。だいいち写真がないのに美人と言われても……

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