STAP細胞「女性・30歳」報道は日韓だけ? なぜ年齢と性別が、これほど重視されてしまうのか

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東大にも、「リケジョ」は少ない

まず若いという点。自分自身を振り返っても、最も研究者として研究にのみ集中できたのは、修士課程から30代前半くらいまでです。もちろん遅咲きの人もいますし、社会人を経験してから大学院に戻り、より上の年齢で成果が出る方もいます。

ただ体力的にも、(家庭や職場の)環境としても、フルスロットルで走れるのはこの時期で、それを過ぎると、職場では管理業務が増え、家庭では親としての責任を負うことになります。私は、子どもとの時間をとれるのは幸せなことだと思いましたから、意識して研究にブレーキをかけましたが、当然、業績のペースは落ちます。

ですから逆に言うと、この年齢で大きな研究上の成果が出るということ自体は、それほど珍しくないと思われます。その意味では、「30歳」なんていうのは、年功序列を前提とするから目を引くだけで、新聞の見出しとしては、本当は「よけいな」情報なのです。

次に、女性で、しかも理系であること。理系に女性が少ないのは、世界の中でも特に日本に顕著な現象です。「弊社」は文系でも女子の比率が低くて4分の1程度、理系がさらに低いために、女子の入学者がいつまで経っても20%を超えません。特に理学部の物性系や工学部に進む理科Ⅰ類の女子比率は1割にも達しないため、「東京男子短期大学」などと揶揄されています。学内の女子学生との接点がないので、女性の視点に立ってものを考えるということのできない男子が再生産されているように思えてなりません。

ある理系の女子学生曰く、「『可愛くて女子力の高いリケジョで研究室も華やかに』なんて、冗談じゃない、って感じです!」。いやそれはごもっとも。「イケメン限定の研究室」と同じくらいナンセンスです。「リケジョ」に、「女子力が高い」という意味まで付与されているとなると、男性側の身勝手としか言いようがありません。

当然、この女子学生比率の低さに関しては、私たちにも危機感があって、男女共同参画室を中心に取り組みをしており、AERAと組んで女子高生向けに『東大へ行こう。』というムック本を出したり、女子の在学生を出身の高校に派遣して宣伝してもらったり、いろいろ試してはいるのですが、一向に成果が上がりません。最大の要因は、地方の公立高校から優秀な女子学生が来てくれないことで、この層は男子では浪人である程度入るのですが、「女の子は浪人までしなくても」と、地元の国立大学にとられてしまうようです。

ですから、もちろん女性がこういう成果を出したことは、とてもうれしく思います。これを契機に女性の研究者が理系でも増えるのなら、「女性」に焦点を当てた報道にも意味はあるのでしょう。

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