実は怖くない!「人口減少社会」の「希望の未来」 世界を「人間の顔をした」デザインに変える

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こうした大量生産、大量消費の回転を、情報の力で加速し、もっと速く、もっともっと速く、もっともっともっと……(ハムスターの回し車を想像してほしい)となると、そのうち遠心力でどこかに吹き飛ばされてしまうのではないかと不安になる。

広井氏によると、このアメリカ的な資本主義を基調とした「限りない拡大・成長」志向が日本に根強いのは、高度経済成長期に味わった「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の成功体験をいまだ引きずっているからである。

また、社会保障をはじめとした日本全体のシステムが「分配の問題は成長によって解決できる」といった前提で組まれているので、この発想を捨てられない。

だが、「地球資源の有限性といった物質的・外面的な意味」でも、「幸福といった精神的な充足の面」でも、「ある種の飽和点ないし限界に達しつつある」と広井氏は続ける。ホモ・エコノミクス的な思考のまま、大量のエネルギー消費や不当な人的搾取を続ければ、資源の枯渇や紛争の契機をもたらしかねず、実は自分たちで自分たちを奪っているということだろう。

そして面白いのが、こういった問題が認識されてきた帰結として「人間の利他性」「協調行動」「関係性」に関心が集まり、脳研究や行動経済学、ソーシャル・キャピタル論、幸福研究などが湧き起こってきたのではないかという見立てだ。

広井氏は、かつて狩猟採集社会や農耕社会の成熟・定常期に起こった「物質的生産の量的拡大から文化的・精神的発展へ」移行した歴史になぞらえて、「人間の行動や価値の力点を変容させていかなければ、人間の生存が危ういという状況に現在の経済社会がなりつつある」と推論する。

つまり、遠心力で吹き飛ばされる前に、高速回転以外の道が模索され、よりよい世界へたどり着けるかもしれないということだ。少し安堵する。

日本は「第3の定常期」へ進めるか

広井氏が、従来より高次の価値観が希求され、今まさに時代が変わろうとしていると述べるのには科学的な根拠がある。それは、アメリカの生態学者ディーヴェイが「世界人口の超長期推移」で示した、世界人口は大きく3回の増加と成熟化・定常化のサイクルを繰り返しており、現在は3回目の定常期への移行期と捉えられるという理論だ。

出典:広井良典『人口減少社会のデザイン』(東洋経済新報社)p160より
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