お客との取引が続かない会社と続く会社の大差 プロダクトからつながりへと価値を転換せよ
私はもともと物欲の強い人間だったはずなのだが、思えばもうかなり前から、モノを買うことにさほどの関心がなくなっている。
趣味の古書やアナログレコードは細々と買い続けているが、モノにお金を使うのはその程度かもしれない。例えば日常で音楽を聴くときにはSpotifyを利用しているし、映画はもっぱらNetflixで観ている。節約しているわけではなく、買う必然性をあまり感じないのだ。
いうまでもなく、サブスクリプションの恩恵である。それはわかっているのだが、ではサブスクリプションのことをきちんと理解しているかといえば、そう断言する自信もない。
『「つながり」の創りかた: 新時代の収益化戦略 リカーリングモデル』(川上昌直 著、東洋経済新報社)に興味を引かれたのも、そんな個人的な理由があるからだ。しかも「現場で使えるビジネスモデル」を体系づけ、実際の企業で「臨床」までを行う実践派の経営学者だという著者の川上氏は、サブスクリプションを独自の視点で捉えている。
企業にとってメリットのあるサブスク
モノが売れないという声を聞くようになって久しい。それは、多くの企業が長らく採用していた「売り切りモデル」が成り立たなくなったからだ。モノを売って利益を計上する、従来型のビジネスモデルである。
ところが売り切りモデルには、企業のゴールを販売で迎えてしまうことで、利益獲得のチャンスを1度きりで終わらせてしまうという側面がある。それ以降は収益が入ってくることはなく、販売した時点で、それ以上ユーザーに深入りはできなくなるわけだ。
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