お客との取引が続かない会社と続く会社の大差 プロダクトからつながりへと価値を転換せよ
なお、実業で役立つビジネスモデルのあり方を研究してきたという川上氏は、上場企業や創業が古い企業、言い換えれば成熟した企業の経営者の悩みや望みを聞く機会が多いそうだ。そんな中、企業をリカーリングモデルに変えたいと考え、あるいは変えようとして失敗したケースも少なからず見聞きしてきた。
では、それらの企業はなぜ失敗するのだろうか? 川上氏によればその答えは明確で、つまりはリカーリングモデルを採用するに当たり、企業側には圧倒的に欠けている視点があるからだ。すなわちそれが、本書で強調されている「つながり」である。
「つながり」とはなにか?
一言で「つながり」といっても、愛着心を意味する「エンゲージメント(engagement)」、間柄を意味する「リレーションシップ(relationship)」、接続性の意味で用いられる「コネクション(connection)」、人との関わりを意味する「ネットワーク(network)」などさまざま。確かにそれらも「つながり」ではあるが、本書では次のように定義づけているという。
リカーリングモデルにおける価値提案は、「プロダクト」そのものの提案では不十分です。単に販売で終わらせず、ユーザーのジョブ(用事)を見極めて、それを達成するために伴走しなければならないのです。その過程で点在するタッチポイントを捉えて、どこかで課金を実現していくのです。(22〜23ページより)
ユーザーが企業とのつながりを感じない限り、収益が繰り返すことはありえない。「プロダクト」から「つながり」へと、価値提案を改めなければならないということだ。ユーザーと継続的な関係を結んでいるからこそ、収益が継続するのだ。
逆にいえば、ユーザーとのつながりが弱い企業は、リカーリングモデルを採用したところでうまくいかないということになる。
事実、すでにサブスクリプションを採用している企業においても、「つながり」が機能していないために失敗しているところが見受けられるそうだ。
サービスインしたにもかかわらず、うまくいかないケースが多いのは、表面的な構造としてリカーリングモデルを取り込んだにすぎないから。その背後にある「つながり」を認識していないからだということだ。だとすれば、つながりの強さが、そのままビジネスの強さを表すことになるともいえる。
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