バラが食べられる?花業界で起きる「大変革」 サブスクからSNSまで、異業種から相次ぐ参入
起業の地として選んだのは、埼玉県深谷市。農作物の栽培管理などを行う際には、「積算温度」という指標を参考にする。これは毎日の平均気温を足していった値で、バラの場合、剪定日から1000度に達した日に花を咲かせるという。
平均気温が高いほど積算温度に早く到達するため、田中が目をつけたのが、「日本一暑い町」として知られる熊谷市に隣接し、ユリやチューリップ栽培など「花の町」としても有名な深谷市だった。
「天候や栽培の環境、行政のサポートがよかった。何より、私のような新規就農者を親切に受け入れてくれた」
だが、現実はそれほど甘くない。1年目は、肥料のバランスをとることに失敗し、栽培したバラを全部枯らせてしまった。
夜は居酒屋のアルバイト
最初の社員は、田中の母と栽培担当者と田中の3人だけ。朝はバラ栽培、日中は営業で食べられるバラを売り込みに歩き、夜は居酒屋でこっそりアルバイトをして食いつないだ。
田中は「若かったから睡眠時間2、3時間で乗り切れたけど……。会社がうまくいかなかったら、社員2人やその家族はどうなるんだろうという、人生で初めて芽生えた責任感だけが支えだった」と笑う。
大きな転機になったのは、2年目に売れ残ったバラを冷凍保存し、ジャムを作ったとき。サラダの飾り付けやケーキのデコレーションなどに使われていた生食用から、加工食品としてのバラへの道が拓けた。
「食べられるバラ」も次第に認知度が上がり、創業3年目で年商は1億円を超えた。当初のもくろみと異なり、現在は売り上げの7~8割を加工食品やバラ由来の化粧品が占める。
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