ブランドと消費者の「関係」が逆転した必然

ネット社会による相互作用がすべてを変えた

インターネットの普及によって、ものづくりや広告のあり方がどのように変化していったのか、(左)岡本裕一朗氏と(右)深谷信介氏に伺いました(写真提供:中央公論新社)
20世紀後半から、BT(生命科学)革命とIT(情報通信)革命が引き起こされ、人間を取り巻く環境が大きく変化しています。「人間中心主義」で進んできた「近代」という時代が、「ポスト近代」へと舵を切り始めました。これによって、哲学も広告もその形を変えつつあります。はたして、どこへ向かうのでしょうか?
激変する世界において「哲学」の刷新を図るスリリングな対話を『ほんとうの「哲学」の話をしよう 哲学者と広告マンの対話』にまとめた哲学者・岡本裕一朗さんと広告マン・深谷信介さんが、デジタルテクノロジー時代の消費社会について語り合った。
※本稿は、岡本裕一朗・深谷信介著『ほんとうの「哲学」の話をしよう』(中央公論新社)の一部を、再編集したものです。

美人投票に参加するとしたら…

岡本裕一朗(以下、岡本):本日は「間主観性」という概念から、哲学と広告について考えてみましょう。突然ですが深谷さん、美人コンテストの審査員になったことなんてありますか?

深谷信介(以下、深谷): いいえ、そんなラッキーな経験は残念ながらありません。モーターショーなどのイベントナレーターやキャストのオーディションなら、少しはございます。

岡本:イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946年)は、ちょっと変わった美人投票を考案しました。「100枚の写真の中から最も美しい顔かたちの6人を選び出すことを要求され、参加者全員の平均的な選好に最も近い選択をした人に賞品が与えられる」(『雇用、利子および貨幣の一般理論』岩波文庫、2008年、215頁)というものです。

どうでしょう。もしこの投票に参加するとしたら、深谷さんならどの人に1票入れますか?

深谷:ええと、まず自分が美人と思う人に投票するのはナシですね。それぞれみな美人と思う基準が違うでしょうから、自分の主観で投票したら賞金をもらえる確率は下がってしまう。ですので、ほかの人がどの写真の人を美しいと思うかを予想して、多くの人が選びそうな人に1票入れます。でもこれってかなり難しいですね。

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