居心地のよかった家からライバルだらけの世界へ
夫の地位を考えれば、アリシアは半ばセレブのようなものに感じられるかもしれないが、これで夫が有罪となり実刑が下れば、お先は真っ暗。貯金を崩すにしても、ティーンエージャーの子どもたちはこれからおカネがかかるばかりだ。目の前にある危機は何よりもまず、家賃をはじめとする生活費である。ここぞとばかりに騒ぎ立てる煩わしいマスコミを蹴散らし、家族を守るべく、アリシアは居心地のよかった家から外の世界へと踏み出す。
学生時代からの友人で、大手ロックハート・ガードナー法律事務所の共同経営者ウィル・ガードナー(ジョシュ・チャールズ)の口利きにより、社会復帰は比較的恵まれた形でかなうあたりは、アリシアの経歴と人脈の勝利か、ラッキーと言おうか。が、アリシアは半年の試用期間の権利をゲットしただけ。生え抜きたちが集う戦場のような法曹界において、実力が証明できなければ再び無職となってしまう。
アリシアが目指すのは、たったひとつしかないジュニア・アソシエイトの座。競い合うのは、ハーバード・ロースクール卒のやる気満々の青年弁護士ケアリー・アゴス(マット・ズークリー)だ。最初はアリシアに対してフェアであろうとするも、13年のブランクがあるおばさんと、どこかで高をくくっていたアリシアが優秀さを発揮するに従い、ケアリーのライバル心は露骨なものとなっていく。
第1回『SUITS/スーツ』でも触れたが、大都市における駆け出しの弁護士にとって、大手事務所に職を得ることは、ハーバード・ロースクール卒といえども狭き門なのである。
したがって、本作でもアリシアの仕事上のライバルは、まず社内にいる。さらに、スキャンダルの渦中の人物の妻、それも夫は元州検事だから、彼をよく知る人々にしばしば遭遇する。
ひとたび法廷に立てば、裁判官から「フロリック? あのフロリックかね?」と聞かれることも。その意味するところは、「せいぜい頑張りたまえ」という敵意の場合もあれば、「ああ、大変だね。私は君の夫を応援しているよ」という場合もある。夫をよく思っていない判事や同業者は多勢いるわけで、前者の場合、アリシアは法廷で徹底的に目の敵にされる。一方、後者のように夫の味方であればアリシアに好意を表すこともあるが、それはそれで同僚などからはやっかまれることにもなる。
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