アメリカ流「良き妻」の、ズルさとたくましさ ある日突然、エリートの夫が犯罪者に!?

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狡猾に、したたかに生き抜く

闘う戦士となっていくアリシア(左)

 これまで恵まれた状況にあったからこそ、アリシアのダメージは大きくもあるのだが、彼女には「私ってかわいそう」といった被害者然としたところがないのが好ましい。むしろ、一度、開き直ったアリシアのやり口は狡猾で、夫の威光を使えるときは使い、ネガティブな要素も巧みに利用して、気がつけばポジティブな要素に変換されている。それがアリシアに本来、備わった資質なのか、生き抜くための手段なのか。おそらく両方なのだろうが、実にしたたかな戦略家ぶり(時に女のズルさ)を発揮していく。そして、かなり早い段階で、勝つためには非情になることもいとわず、みるみるうちに闘う戦士の顔つきへと変貌を遂げていく。

演じるジュリアナ・マルグリースは、『ER 緊急救命室』の看護師キャロル役で日本でもよく知られており、気の強いキャラクターが定番だが、アリシアは単に気丈さを強調したキャラクターではない。その女性としての魅力と人間としての複雑さは、タイトルにあるように、彼女が不実な夫と即離婚という道を選ばず、グッド・ワイフであろうとし続けるところにあるだろう。

この意味深なタイトルについては、第4回『クローザー』でも触れたが、アメリカが基本的には保守大国であることに由来していると思う。たとえば、現実でも政治家が何か問題を起こした場合、または大統領選などでも、必ず妻の存在がフィーチャーされ、いかに家族に支えられているかといった理想的なファミリー像が、有権者の好感度を大いに左右する。日本に比べても、アメリカのほうがよりあざとく“家族の絆”“理想の家族”を前面に押し出していると、アメリカのニュースなどを見るたびに筆者は思わされる。はたして、グッド・ワイフとは、どのような女性のことを指すのか、または誰が考えるよき妻なのだろうか。

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