悪化する日中関係の背景に2つの「物語」の衝突。高市首相の「台湾有事」答弁を「中華民族の偉大な復興」の脅威とする中国にどう向き合うか
日中関係の緊張は外交や安全保障の問題にとどまらず、経済の予見可能性も揺さぶる。
習近平指導部は昨年11月以来、高市早苗首相の台湾有事をめぐる国会答弁に、「軍国主義化」など激烈な言葉で反応している。中国軍の戦闘機は自衛隊機へレーダー照射をし、また日中経済協会などの経済団体は例年の訪中を延期した。さらに年明けには軍民両用品の対日輸出の規制強化を発表。現指導部は何を懸念しているのか。
習近平指導部は「不安全感」を抱いている
中国は攻勢的な対外行動を強めている。昨年は抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80年の式典の軍事パレードや台湾周辺での軍事演習を実施した。だが皮肉にも現在の中国は過去200年で最も安全な環境にあり、外部脅威は限定的だ。募る懸念の正体は指導部が抱く「不安全感」である。
現指導部が発足してすぐ、外交戦略は「韜光養晦(とうこうようかい)」(爪を隠す)から「奮発有為(ふんぱつゆうい)」(成果を追求する)へと転換した。この背景には永続的権力に固執する指導部が、経済成長によって多様化、多元化する社会や、経済のピークアウト、人口動態の変化、コロナ禍を経て、自らの理解を超えて変化する国民に脅威を感じている実態がある。中国の内政と外交は、内発的な「不安全感」と結び付いている。
「不安全感」は、習指導部が掲げる「総体国家安全観」と密接に関係している。指導部は、国家安全という領域横断的な政策課題にかかる調整と決定のための組織として、2014年4月に中央国家安全委員会を設置。このとき指導部は総体国家安全観を提起した。



















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