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異例の「三中全会」で習近平は何を伝えたかったか 慶大・加茂教授が中国共産党の内幕を徹底解説

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中国共産党指導部は今、何を考えているのか。ロングインタビューでとことんわかる!

習近平国家主席は共産党の重要会議「三中全会」をあえてこれまでとは違う形で運営することで、中国社会にメッセージを送っている(写真:アフロ)

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本来は昨年秋に開かれるはずだった中国共産党の重要会議、「三中全会」(第20期中央委員会第3回全体会議)が半年以上遅れてようやく開催された。中国経済の先行きが危ぶまれる中、いま共産党指導部は何を考えているのか。中国政治分析の第一人者である、慶應義塾大学総合政策学部の加茂具樹教授にじっくり聞いた。

――通常なら昨年秋のはずだった三中全会の開催は大きく遅れました。

権威主義の政治であろうと民主主義の政治であろうと、意思決定をするための会議をいつ、どのように開催し、何を議題にするかは、政治権力の源泉であり、政治の重要事項だ。

1990年代以降の中国政治は、毎年ほぼ同じような時期と日数で共産党や国家機関の会議を開催し、毎回、同様の議事進行の下で共産党と国家の意思決定を下すことを通じて、権力と権威の正しさを確認してきた。これが、過去30年間、継承されてきた中国共産党のガバナンスだった。

かも・ともき 1995年慶應義塾大学総合政策学部卒業。2004年同大学院政策・メディア研究科博士課程修了。博士(政策・メディア)。2015年から慶大総合政策学部教授。2016年から2018年まで在香港日本国総領事館領事を務める。現在は慶大総合政策学部長。著書に『十年後の中国』(一藝社、2021年)など(写真:本人提供)

党規約には年1回必ず、中央委員会を開催されなければならないと明記されている。そうであるがゆえに歴代の指導部にとって、中央委員会の開催は最も重要な政策課題である。

習近平指導部が、中央委員会の開催日程に手を加えたことは、習氏の政治が、継承されてきた権威と権力のあり方を変えることを狙っていると考えていいだろう。

時期が来たから会議をするのではなく、議論すべき問題があるから会議を開く、というのが習氏のスタイルのように思える。

急速な経済成長を実現した後の成長の後退と格差の拡大という国内環境が変化し、米中関係の悪化とロシアによるウクライナ侵攻によって国際環境が大きく流動するなかで、習近平指導部は、こうした状況の変化に主体的に向き合うという姿勢を示している。

「主体的」が習近平政治のキーワード

この「主体的」が習近平政治のキーワードであるとすれば、会議開催のタイミングにも「主体性」が表れているといってよい。すでに、前回2018年の三中全会も2月に開催されており、慣例からは外れていた。

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