変質した「3中全会」にみる変わりゆく中国政治 中央委員会の地位低下や対台湾立法措置に注目

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日米欧では経済問題への対処が出されると思われた「3中全会」だが、実際には「ミニ政治報告」のような内容。背景やポイントを専門家が鋭く解説する。

習近平総書記
権力を強化していく習近平政権だが、経済の重要性はますます薄れつつある(写真:Bloomberg)

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※本記事は2024年8月3日6:00まで無料で全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。

2024年7月15~18日まで中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(20期3中全会)が開催された。会議では習近平総書記の説明演説に基づき、「改革のさらなる全面的深化と中国式現代化の推進に関する中国共産党中央の決定」(「20・3決定」)と題する決議が採択された。

これまで3中全会は、直近に開かれた共産党大会で提出された政治、経済、社会、文化、外交、軍事・安全保障、党務など多方面に及ぶ政策領域の長期方針に基づき、とくに経済分野を中心に、それに関係する行政や民生上の課題(戸籍、労働、社会保障など)について中期的な改革の取り組みを決定する重要な会議として位置づけられてきた。

それゆえ今回の3中全会前にも、日本をはじめ海外の専門家の間には中国経済・社会が直面する構造的な課題に対し、一定の方向性が示されるのではないかとの淡い期待があった。ポスト・コロナ期になっても十分に回復しない足元の景気動向や長引く不動産業の低迷、人口減少に伴う社会・経済的活力の低下、社会保障の持続可能性など懸念が続いているからだ。

裏切られた3中全会に対する期待

だが、フタを開けてみれば、「20・3決定」は、2022年の20回党大会での既定の内容をもとにその後の政治経済状況の推移を部分的に足し合わせたような「ミニ政治報告」のような文章だった。メリハリと具体性の乏しい総花的内容に対し、市場関係者の失望は大きい。

アメリカのあるエコノミストは次のように手厳しく批判した。「今年の3中全会では、深刻な経済・金融問題への対処が急務であるにもかかわらず、習国家主席が市場の方向性とは対照的に内向き姿勢であることを確認する以外、本質的なことは何も打ち出されなかった」、「3中全会でまとめられた中身の乏しい方針は職務怠慢に等しい」。

経済専門家のこうした見方に対し、政治学者である筆者の意見は次の4点である。

第1に、習近平政権の下、とくに2022年の第3期政権の成立以降、従前のような社会経済の中期的な発展の方向性と、そのための改革措置を国内外に提示するという3中全会の意義はすでに失われた。

第2に、したがって20・3決定を、経済・社会改革の文書として読むのは、文書の起草グループの長である習近平の考えにそもそも合致していない。習近平時代が続く限り、3中全会が経済・社会改革の重要会議としての意義を取り戻すことは期待薄だろう。

第3に、今回の3中全会にみられるとおり、政策過程全般に対する習近平個人と中央の特設機関の影響力が強まった結果、政策形成と政治的コミュニケーションにおける党中央委員会の役割は今後さらに低下していく可能性が高い。

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