10月27日未明、心臓発作により68歳で急死した中国の李克強・前首相は、ひと言でいえば西側からみて「話が通じる」リーダーだった。
習近平国家主席のような共産党高級幹部の子弟とは違い、李克強氏は安徽省の普通の家庭の出身である。文化大革命の時期に少年時代を過ごし、大学入試が再開された1978年に最難関とされる北京大学の法学部に入学した。共産主義青年団の先輩である胡錦濤・前国家主席と同じく、改革開放後の社会で実績を重ねて昇進したエリートだ。
博士号を持つ本格派のエコノミスト
北京大学の大学院では経済学に転じ、のちに博士号を取得している。中国の要人にありがちな、実力不明の「なんちゃって博士」ではない。李克強氏の博士論文は中国の経済学界で最も権威があるとされる賞を得ており、本格的なエコノミストだ。こうした素養があるうえ英語も堪能だったので、西側との「共通言語」は豊富だった。
ときに、その発言は波紋を広げることもあった。2010年には内部告発サイトのウィキリークスで「中国の統計は信頼できない。頼りにできるのは電力消費量、鉄道輸送量、銀行融資の増加率だけだ」という発言が暴露された。李克強氏が遼寧省のトップである党委員会書記だった2007年、アメリカの駐中国大使にそう語ったとされている。
すでに最高指導部入りが確実視されていた李克強氏の発言が伝わると、欧米ではこれら3つの指標を組み合わせた「李克強指数」が中国景気ウォッチのために使われるようになった。本人もそのことはよくわかっていたようだ。
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