「あなたの番です」の熱狂に見えたドラマの未来

視聴者の今をとらえたコンテンツのすごみ

まず“大”の仕掛けは、第1章のキャッチコピー「毎週、死にます。」に掲げたように、各話の最後に衝撃的なシーンを用意したこと。とりわけ10話の最後で、ダブル主人公の1人だった手塚菜奈(原田知世)が殺されたシーンは特大のサプライズとなり、手塚翔太(田中圭)の怒りとともに犯人予想の熱が帯びていきました。

また、各話の死体描写は、謎が謎を呼ぶ好循環となり、「続きが気になる」「早く見たい」と思わせる連ドラならではの魅力につながっています。

次に“中”の仕掛けは、犯人探しに関する伏線。意味深な言動や描写などを通常の作品以上に組み込んで伏線を増やすことで、考察合戦を盛り上げました。2010年代は気軽に見られる1話完結のミステリーばかりで当作のような長編ミステリーは少なく、あったとしても「湊かなえさんの小説をドラマ化したもので結末がわかってしまう」など、伏線をちりばめて盛り上がれる作品は少なかったのです。

その点、『あなたの番です』はオリジナル作品であるうえに、第1・2章に分けて第2章に「反撃編」という扇情的な新要素を加えることで、謎解きの熱気をさらに高めました。

最後に“小”の仕掛けは、思わずネットに書き込みたくなる小ネタ。榎本早苗(木村多江)のハンドミキサー暴走、尾野幹葉(奈緒)の毒霧噴射、袴田吉彦さんが久住譲に加えて本人役でも出演、元アイドル・西野七瀬さんの「二階堂さんのしたいこと、されたいです」というセリフ、極真空手世界大会での優勝歴を持つ横浜流星さんによるアクション、劇中と同様に楽しめる「AI菜奈ちゃん」など、「そうきたか」と思わせる意外なものから俳優の持ち味を生かしたものまで、多彩な仕掛けで視聴者を楽しませています。

接触期間の長さと回数の多さを生かす

このところドラマ業界では、ネット上の反響を狙って小さな仕掛けをちりばめる演出が増えていましたが、『あなたの番です』が優れていたのは、まず大・中の仕掛けを前面に押し出したこと。つまり、「大・中の仕掛けをベースにして視聴者を楽しませつつ、補助的に小さな仕掛けを投入していく」という重層的な作品だったのです。

このような仕掛けの手数と多彩さは、ひとえにスタッフとキャストが汗をかいた証しであり、視聴者がこのような努力を感じているからこそ、成功につながったのでしょう。

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